いま38.5%の米国産牛肉の関税は、協定発効と同時に26.6%に下がり、その後、段階的に下がって2033年度には9%になる。

 これは、米国を除く11ヵ国で昨年末に発効した環太平洋経済連携協定(TPP)と同じ内容だ。

 関税が下がれば価格が下がって買いやすくなるので、「米国産牛肉がより安く食べられる」と歓迎する消費者や外食業者も少なくない。

 しかし米国産牛肉には、生産効率を上げるためにいくつもの薬剤が使われており、安全上の不安が指摘されている。

 その1つが「肥育ホルモン剤」という動物用医薬品だ。

 肥育ホルモン剤は牛の成長を早めるため、米国・カナダ・オーストラリアなどでは広く使われている。

 動物の体内にあるものを製剤化した天然型(3種類)と、化学的に合成して天然型と同じ作用をする合成型(3種類)がある。

 人のホルモンは体内で必要なときに分泌され、さまざまな働きをしているのだが、肥育ホルモン剤が投与された米国産牛肉を食べると、余分のホルモンが人の体内に取り込まれる。

 肥育ホルモン剤には細胞分裂を活発にする作用があり、特にがん細胞を刺激する。このため、女性の乳がんや子宮がん、男性の前立腺がんなどホルモン依存性のがんを誘発する疑いが持たれている。

 肥育ホルモン剤には他にも人の健康を損なう作用のある疑いがあり、EUは1988年に域内での使用を禁止し、翌年には肥育ホルモン剤を使った牛肉の輸入を禁止した。

 この輸入禁止措置はWTO(世界貿易機関)協定違反だと米国などが提訴し、1998年にはEUが敗訴したが、EUは81品目に対する報復関税という報復措置を受けながら、輸入禁止をやめなかった。

 米欧間の紛争は今年8月、EUが米国産牛肉の輸入割当枠を7年かけて年3万5000トンに拡大することで決着したが、輸入の対象は「ホルモン剤不使用」の牛肉に限っている。

米国の消費者も見放す?
有機牛肉などの需要急増

 肥育ホルモンの安全性について、食品の国際規格を設定する機関(FAO・WHO合同食品規格委員会=CODEXコーデックス)は、天然型は適正に使用されている限り人の健康に危害となる可能性はないとし、合成型は設定された残留基準値以下であれば問題はないとしている。

 日本政府はこれとほぼ同等の残留基準を定め、それ以下の牛肉は輸入も販売も認めている。

 ただ、国内の畜産業者は1990年代末に肥育ホルモン剤の使用をやめており、国産牛肉には肥育ホルモン剤は含まれていない。