能動性や迅速さなども
数値評価できる方法がある
その方法とは、やはり、期限と数値で示す方法だ。現在の到達地点と、1ヵ月後の到達地点の数値の差を把握して、成長度合いを見極めれば、伸びしろが数値化できる。例えば1ヵ月間に、各1時間の会議が4回あったとして、自由に発言できる機会に何回発言したかで、やる気がわかり、能動性が数値化できる。
さらに、全員が発言する機会に何番目に発言したかで、迅速性が数値化できる。何番目に発言するかを事前に計画させておき、実際の発言の順番をチェックするという手法もおすすめだ。これによって、計画実行力の高さを数値化できる。
発言の順番をいちいち記録するなど、手間がかかり過ぎると思った人もいるかもしれないが、30人くらいであれば、進行役をしながら1人で座席図に記録できる。発言の順番を記録すること自体、参加者の動向の良しあしをその都度判定しているようで、参加者の意欲を低下させるという意見もあるが、良しあしを判定するものではない。
能動性の反対は他の人に対する謙譲性、迅速性の反対は慎重性、計画実行力の反対は意外性といえるので、発言をしたり順番が早かったりすればよいということではなく、その人の行動特性を数値化するだけのことだ。もっとも、私がプログラムを実施している企業では、謙譲性ではなく能動性、慎重性ではなく迅速性、意外性ではなく計画実行力を把握したいという要請がほとんどだが。
行動特性を把握するといっても、たまたま他の人に譲っただけ、たまたま早く発言しただけなので、真実の姿を表しているとは限らないという意見もある。一度だけの計測では誤差があるだろう。しかし、一定期間の何度かの会議などでの発言を記録して集計すると、より確からしいデータとなる。
ある自動車メーカーでは16時間で212項目の集計をし、役員の成長性、能動性、迅速性、正確性、理解力、計画実行力を測定した。データを集積すればするほど、その人の行動特性を忠実に表すようになる。印象評価しかできないと思われている資質や能力を、数値化することができるのだ。そうすることで、評価の説得力を高めることができる。
政治の世界でも、ビジネスの世界でも、曖昧表現や印象評価はもうたくさんだ。小泉環境相もビジネスパーソンも、表現するときには期限と数値を盛り込み、評価するときには行動を数値で把握して、説得力を高めていきたいものだ。