――高次の目標をうまく創出し、ブランド構築に成功した例はありますか。

 トヨタがそれをうまくやりました。先ほど例に挙げた同社の旗艦ブランドである「プリウス」です。

 世界初のハイブリッド車として登場したプリウスは、「地球温暖化問題に取り組む」という高次の目標を顧客、社会と共有しました。そして実際に、環境にやさしく、優れた技術を持った製品でした。

 プリウスを運転していると、それを見た近所の人や友人が「あの人はハイブリッド車に乗っている」と気付きます。つまり、購買者はプリウスに乗ることで、「地球温暖化問題に関心を持ち、実際にその防止に貢献している」という姿勢を周囲にアピールすることができる。彼らは、自己表現を楽しんでいるのです。

 こうしてつくり上げられたプリウスのブランドイメージは強固なもので、ホンダやフォードがハイブリッド車を市場に投入しても、約15年間、トヨタにとっては競合相手にすらなりませんでした。

 プリウスは早々にハイブリッド車の覇権を握り、人々と高次の目標を共有し、市場のリーダーシップを取り続けました。これは、トヨタにとって非常に名誉な成功であったと思います。

デジタル時代のブランド戦略を支える
強力な「ストーリー」とは?

――企業がブランドイメージをつくりあげる上で大きな役割を果たしていた「メディア」も、その形を大きく変えています。この状況をどう見ていますか。

 コミュニケーションの方法がありすぎることは、企業を悩ませている課題の一つです。商品を売るために広告をつくり、それをテレビやラジオで流して……、といった従来型の手法はますます機能しなくなっています。

 こうした課題を解決するための手段の一つが、ソーシャルメディアの活用です。しかし、ただ商品に関する投稿をしただけでは、誰も関心を持ちません。大事なのは、コンテンツ。さらに詳しくいえば、そのコンテンツに「ストーリーを持たせる」ことが重要なのです。

 ただ事実を描写するのではなく、力のある「ストーリー」を持っているコンテンツのほうが、記憶に残り、人々を引きつけ、意識を変え、触発し、激励することがわかっています。その効果は、200%向上するという研究結果もあるほど、驚異的です。