政府は今後、2004年に導入されたマクロ経済スライドをフルで発動しようとしている。マクロ経済スライドは、保険料を納める被保険者数の減少と平均余命の伸びに応じて年金給付水準を削減する仕掛けだ。

 その結果、今回の財政検証では、成長実現のケースでは、マクロ経済スライドが効いて、30年には給付が2割減になり、国民年金(基礎年金だけ)なら約3割も削減になる。

 経済成長が実現できないベースラインケースで見ると、国民年金なら約4割の削減になる。国民年金は現状で約6万5000円だが、30年にはいまの物価水準で考えると4万円前後になってしまう。

 マクロ経済スライドを適用することで、給付水準を削ることができて、結果として年金財政全体は維持できることになる。しかし制度が維持されたところで、給付水準が大幅に削減された年金では生活できなくなってしまう。

 とくに問題となるのは、ロストジェネレーション(ロスジェネ)や母子家庭である。

 一方で政府は制度維持の対策として、年金受給の開始年齢を引き上げることやパートや契約・派遣労働者の厚生年金適用を拡大していくことを掲げている。

 だが年金受給年齢を引き上げるといっても、年金をもらえるようになるまでの高齢者の雇用が簡単に確保できるとは思えない。厚生年金の適用拡大も、労賃コストの割合が高い小規模事業者などは、企業拠出金を負担できない可能性が高く、一定の限界がある。

シミュレーションとは言えない代物
ご都合主義の「中長期試算」

 年金不安の第2の原因は、年金財政検証の基礎になっている「中長期の財政経済に関する試算」(以下「中長期試算」)に無理があり、したがって年金財政検証のシミュレーションも現実にあり得ない無理な数値を前提としていることだ。

「中長期試算」は内閣府が半年ごとに改訂しているが、年金財政検証は、まずは最初の10年間は、「中長期試算」の成長実現ケースとベースラインケースのシミュレーションを前提にして、それ以降は6つのケースに分けて年金財政の状況を予測・分析している。

 ケースⅠ~Ⅲは、「中長期試算」の成長実現ケースで労働参加が進むケースになる。ケースⅣ~Ⅵはベースラインケースであり、そのうちⅣとⅤは労働参加が進むケースで、Ⅵは労働参加が進まないケースになる。