5年に一度の「財政検証」
特段のサプライズはなし

年金を巡るネガティブな報道を鵜呑みにしてはいけない。
公的年金は未払いにして、民間保険に入っている人をたまに見かけるが、これは非常に愚かな選択である Photo:PIXTA

 5年に一度実施される公的年金の「財政検証」の結果が、8月27日に発表された。今回もマスコミの報道には相変わらずネガティブな傾向が見られたが、実際のところはどうだったのだろうか?

 筆者は発表の当日、厚生労働省の年金部会を最初から最後まで傍聴しており、資料も読み込んでみた。結論から言えば5年前、2014年の財政検証と比べて大きな差はなく、若干改善しているという状況であったと言っていいだろう。

 詳細は360ページを超える報告書に記載されており、その全てを紹介することはできないが、要旨をごく簡単に言えば、以下の3点である。

1.所得代替率は5年前の試算と比較して出生率の増加や労働参加の拡大により、0.2~0.9%ぐらい改善している。
2.オプション試算によれば、被用者保険のさらなる適用拡大と保険料拠出期間の延長、および受給開始時期の選択拡大は年金の水準確保に効果が大きい。
3.今後も経済成長と労働参加が年金の持続可能性にとって極めて重要である。

 いずれもごく当然のことであり、特段サプライズもなければ問題が生じているわけでもない。言うまでもなく、「財政検証」というのは“将来予測”をしているわけではなく、プロジェクション、すなわち現状の姿を将来に投影するとどうなるかということを検証しているのである。よく言われる「100年安心」という言葉の意味も、「年金は100年間安心だ」ということではなく、「年金の持続可能性の検証をするに当たって、向こう100年間ぐらいの長期を見据えて行う」という意味だ。

 少子高齢化が進むわが国においては、何も手を打たなければ際限なく保険料の負担が増大しかねない。そこで2004年に将来を見据えたさまざまな環境を考慮した上で保険料負担の上限を定め、以後、状況に大きな変化がないかどうかを確認するために、プロジェクションとして5年ごとに「財政検証」を行なっているのである。これが“年金の健康診断”と言われるゆえんなのだ。

 年金に関しては、何かあるごとにネガティブな報道がつきまとう。その理由は一体どこにあるのだろうか?筆者は行動経済学における認知バイアス、中でも「代表性ヒューリスティック」と「確証バイアス」にあると考えている。どういうことか、わかりやすく考えてみよう。