この手の「試算」では、物価上昇率を低めにして名目GDP成長率がそれを上回るようにすれば、実質GDP成長率を上げていくことができる。

 同時に、財政赤字を膨らませないよう(プライマリーバランス=基礎的財政収支を黒字)にするには、名目GDP成長率が名目長期金利を上回っていくことが必要条件になる。

 だが、アベノミクスの効果が落ちているために、こうした条件を満たそうとすると、どんどん現実にはあり得ない数値の組み合わせになってしまう。とてもシミュレーションとはいえない代物になってしまっているのだ。

「中長期試算」のうち経済成長が最もうまくいくケースを見てみよう。

 第2次安倍政権が発足し日銀が異次元緩和を始めた4ヵ月後の2013年8月の「試算」と直近の2019年7月末の「試算」を比べてみると、行き詰まりがはっきりわかる。

 図1は、2013年8月の「中長期試算」の経済再生ケースだ。2年で2%の物価上昇率が実現するという異次元緩和が成功した場合で、名目GDP成長率が急速に上昇するとともに、消費者物価上昇率も名目長期金利もそれにつれて上がっていくシナリオが描かれている。

 これに対して図2は、2019年7月の「中長期試算」の成長実現ケースだ。

 これを見ると、2018年に名目GDP成長率が0.5%だったのに、19年1.7%、20年に2.0%、24年までに3.4%まで急上昇していく。これだけ急速な経済成長があるなら、物価上昇率も長期金利も上昇していくのが自然である。

 ところがそうはなっていない。