ブレイディ 最初のアドバイスが「早口にならないこと」。私、緊張すると早口になるんですよ。2年前『子どもたちの階級闘争』という本で「新潮ドキュメント賞」をいただいたときのスピーチの動画がYouTubeにアップされていまして、それを息子が見て言ったんです。「日本語だから何て言っているかは分からないけど、すごく早く話をしていて、早くこの場から去りたいと思っているのがよく分かる」と。だからあのしゃべり方はいけないということですね。

 そして二番目のアドバイスが「エンジョイせよ」。スピーチを楽しめと。その続きに「とはいえ、スピーチの前には酒は飲むな」とも書いてあって(笑)。

 三番目のアドバイスは、「Be yourself、自分自身であれ」でした。自分自身の価値観で書いた本で賞をもらったんだから、他の人になろうとするなと。

 そんなアドバイスを、13歳の息子に言われてしまう母親なんです(笑)。

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岸見 素敵なお話ですね。そういうことを子どもが言える親子関係はいいですね。親に言いたいことがあってもなかなか言えないものです。

ブレイディ 母親と思われていないんですかね?(笑)

岸見 それは光栄なことだと思います。私も子どもたちとずっと友だちとして生きてきました。「縦」の関係ではなく、「横」の関係ですね。

 うちの息子も私に対してきちんとコメントしてくれます。たとえば、私も息子も研究職なのですが、息子が私に何と言うかというと「君のまとめ方は粗雑すぎる」と(笑)。言い方はちょっと辛辣ですが、でも私も嫌な気持ちにはなりません。「言い合える関係」ですから。そんなことを言っても私が気分を害さないことを息子は分かっているから言うのです。

 相手の「地雷を踏む」ということがない関係、仮に踏むことがあっても許し合える関係、それが親子関係の一つの理想だと思います。