「ティッシュどうぞ」をある伝え方に変えたら、受けとる人が1.3倍に!?
街頭でのティッシュ配り。駅前などでよく見かけますが、受け取らずに通りすぎてしまうことも多いものです。寒空の下、道ゆく人に避けられ、ふるえながらも声をふりしぼる……まるで、現代版・マッチ売りの少女です。
そんなティッシュ配りで定番の伝え方と言えば、
「ティッシュどうぞ!」
これを、伝え方の技術「相手の好きなこと」でつくると、
「この季節、あると便利ですよ。ティッシュどうぞ!」
相手の好きなことをもとに伝えると、印象がいい上に、相手がこちらのお願いにこたえてしまうと『伝え方が9割』で解説しましたが、実際ちゃんと、そのとおりになるでしょうか。
2018年12月。調査は行われました。
さて、気になる結果は、こちらです。
<ティッシュを受けとった人数>
・伝え方の技術なし
206人/1,000人
・伝え方の技術あり
263人/1,000人
伝え方の技術ありのほうが、実に、
約1.3倍の人がティッシュを受けとった
という結果に。
調査員が2人組となり、池袋駅前の路上にて1週間にわたって声かけを行いました。だれが配るかで差が出ないよう、同じ調査員で時間を区切り「伝え方の技術なし/あり」の両方を調査しました。
配布を行った学生も、伝え方を変えたときに、リアクションの変化を感じた模様です。
学生から、
「伝え方を変えたら、興味を持ってくれる人が増えた」
「風邪を引いていそうなマスクをしている人が相手だと、特に効果があった」
といったコメントが上がりました。
変わったところでは、
「ユーモアあるね、と褒められた」
との声も。
わざわざ好意的に話しかけてもらえるあたり、ティッシュ配りでは、伝え方の技術が有効だと分かりました。
条件によっては効果が出ないものも
つづいての実験は、立教大学のキャンパスにて行われました。
約2万人もの生徒数を誇る、立教大学。休み時間には、講義棟が学生でワッとあふれかえり、エレベータ待ちの行列ができてしまうこともしばしば。
そこで、もっと階段を使ってもらうべく、2種類の貼り紙をつくりました。
ひとつは、伝えたいことをストレートにコトバにしたもの。
「階段を利用してください」
もうひとつは、伝え方の技術「相手の好きなこと」を使って、
「エレベータ待ちで2分、階段で20秒」
と書いたポスターを掲載しました。
階段のほうがずっと早く着きますよ、と学生にとってのメリットを具体的な数字つきで伝えています。
結果は、こちら。
<1,000人中、階段を利用した人数>
・伝え方の技術なし
668人/1,000人
・伝え方の技術あり
695人/1,000人
伝え方の技術ありのほうが
約1.04倍の人が階段を使った
という結果に。あまり変わらなかった、と言っていいでしょう。
昼の1時間に調査員が立ち、約1週間ずつ、「伝え方の技術なし/あり」の場合それぞれでカウントしました。
目的の階に早く着けるのはたしかに「相手の好きなこと」ではあります。
でも、相手はいつも講義棟を使っている学生たち。
調査後、学生たちに話を聞いてみると、
「講義があるのはだいたい1階か2階なので、もともと階段しか使わない」
「遅刻になるかならないか、ふだんからギリギリの駆け引きをしているので、知らされなくても階段の方が早いのは体で知ってる」
などの意見が。
伝える相手にとって、本当にメリットになっているかどうかは、よく検討する必要があると分かりました。