どんなにどんなに良い豆を買っても、淹れ方で失敗したらまずくなるのがコーヒーの難しさ。まず基本的な「抽出の理屈」を学ぶことが結局のところ近道である。NHK『逆転人生』、日本テレビ系列『嵐にしやがれ』にも出演し話題沸騰!日本人唯一のワールド・バリスタ・チャンピオンである井崎英典氏が導き出した、抽出の6つのルールとは?井崎氏の著書『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』から、その内容の一部を紹介する(撮影:京嶋良太)。

TV『嵐にしやがれ』出演で話題!【永久保存版】誰でもコーヒーを美味しく淹れられる6大ルール

良い抽出とは、効率良く混ぜること

コーヒーにおける良い抽出とは「お湯とコーヒーの粉を、最適な比率で効率良く混ぜる作業」です。

では、なぜ「効率良く」混ぜる必要があるのでしょうか?

お湯とコーヒーの粉を混ぜることで、コーヒーの成分が水に移行する現象を抽出と呼びますが、抽出においてコーヒーの成分を100%溶解させることは不可能です。

なぜなら、コーヒー豆の約70%が水に溶け込むことのない不溶性固形分で構成され、水に溶け込むことができる可溶性固形分は約30%程度しか存在しないからです。

したがって、いかに効率良くコーヒーの成分を水へ移行できるか、が抽出における最も重要な考え方となります。

100回抽出して、100回まったく同じような味わいに抽出できるか、というとそれは不可能と言えます。それほど、コーヒーの味わいに影響を与える要素は数多く存在するのです。

だからこそ、できるだけ再現性の高い方法を選択すること、すなわち「数字」を頼りに抽出の再現性を高めることが重要になります。その数字の重要性を次節で紐解いていきます。

お湯と粉を効率良く混ぜる6つのルール

より美味しいコーヒーを、再現性高く抽出するためには、次の6つを計測し、遵守することが大切です。なお、ここでは基本的な考え方を説明しているので、具体的な数字に基づく実践法については、第6回をご覧ください。「実演動画」も公開しています。

【抽出の6つのルール】
(1)豆の重さ
(2)お湯の重さ
(3)抽出時間
(4)温度
(5)蒸らし
(6)注ぎ方(流量・流速・回数・高さ)

(1)豆の重さ

みなさんはどのようにコーヒー豆を計量していますか。おそらく最も一般的な方法は、計量スプーンで計量する方法ではないでしょうか。すり切り1杯がコーヒーカップ1杯分、すり切り2杯が2杯分、というように記憶している方もいらっしゃると思います。

家庭で淹れる最初のステップとしては簡単なので私は良いと思っていますが、もっと美味しいコーヒーを楽しみたいと思っていらっしゃる方にはおすすめできません。スプーンを使った計量方法はコーヒーの体積を基準にしていますが、コーヒー豆は焙煎度合いによって重さが異なるからです。

焙煎豆には微量ながら水分が含まれており、その水分量は焙煎度合いによって異なります。一粒あたりの豆の重さは、焙煎度合いが深くなればなるほど軽くなり、浅くなればなるほど重くなります。

計量スプーンを使った計量方法は、コーヒー豆の体積が基準となります。当然、浅煎りと深煎りでは体積は同じでも、重さが異なりますので、不安定な味わいの原因となり得ます。またコーヒー豆は、品種によって豆の大きさも異なりますので、品種の違いもまた計量スプーンによる一貫した計量を難しくします。

これらの理由から、コーヒー豆は「スケール(電子秤)」で重さを測っていただくと、再現性が増します。スケールで重さを測ることで、浅煎りであろうが深煎りであろうが、いつも重さは同じになります。初心者こそスケールを買ってほしい理由は、第1回で解説しています。

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(2)お湯の重さ

使用するお湯の量を計量することも重要です。普段みなさんが抽出する際に目安としているのは、きっとサーバーの目盛りではないでしょうか。例えばドリップで抽出するときは、「この線に来たら○杯分かな?」といった目安を持って抽出していると思います。

サーバーの目盛りはあくまでも、メーカー表示の「目安」であって目分量です。また抽出量は、目盛りを見る角度次第で大きく変動しますので、抽出量に不安定さをもたらします。

よって、美味しいコーヒーを抽出するためには、抽出量ではなく「抽出に使用するお湯の量」を計量することをおすすめします。

計量したコーヒーの粉、抽出器具(ドリッパー、ペーパーフィルター、サーバーもしくはカップ)をスケールに載せてゼロ設定することで、抽出に使用する湯量のみをスケールで計測することができます。つまり、抽出中に加えているお湯の量を抽出開始時から終了するまで継続的に把握することができるのです。

抽出とは「お湯とコーヒーの粉を最適な比率で効率良く混ぜる作業」と前述しましたが、抽出成功の秘訣は、コーヒー豆の重さだけではなく、使用するお湯の重さをコントロールすることが鍵となります。