(3)抽出時間

3つ目のポイントは、抽出時間を計測することです。抽出時間がその日の気分で変わってしまっては、せっかくコーヒー豆の重さやお湯の重さを計測した努力が台無しです。

抽出時間とは、すなわちお湯とコーヒー豆が触れ合う時間です。お湯がコーヒー豆と触れ合う時間によって、コーヒーの濃さや薄さ、味わいの出方に影響を与えます。

理想的な抽出時間は、抽出方法によっても異なります。当然、同じ抽出方法内でも出したい味わいによって抽出時間は変動します。

一般的な抽出時間は、ドリップなら「2~3分」です。一貫性を持って抽出時間を守ることが抽出の上達に重要だと思います。

「一般的」とご説明したのは、私が抽出時間の目安を「3~4分」に設定しているからですが、その理由については『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』で詳しくご説明しています。

(4)温度

4つ目のポイントは、抽出時に使用する湯温をコントロールすることです。前提として、水が最大限の抽出力を発揮するのは「100度」であることを覚えておく必要があります。

しかし、水の抽出力が最大限に到達するということは、好ましい成分も好ましくない成分も同時に最大限引き出される可能性があります。

温度をコントロールする上で重要なことは、焙煎度合いに合った温度帯を知ること、そして自分好みの濃度感を引き出す温度帯を知ることです。

ドリッパーは構造上、お湯と空気が触れる表面積が大きいので、抽出中に抽出温度が否応なしに段々と下がります。例えば風通しの良い場所や空調の真下でドリップをする場合は、より顕著に抽出温度が下がりますので、ドリップをする場所にも細やかな配慮が必要です。

また、事前にドリッパーを温めていなかったり、ドリッパーの素材によっても、抽出温度は劇的に下がります。いくら抽出湯温をコントロールしても、抽出環境次第で抽出温度は変化する可能性があるのです。

したがって、焙煎度合いに応じた自分好みの濃度感を引き出す抽出湯温を探った上で、抽出温度の低下を防ぐために最善を尽くすことが重要です。

(5)蒸らし

5つ目のポイントは蒸らしです。一般的に、蒸らしにおけるゴールとは「コーヒードーム」を作ることであり、「コーヒードーム」が上手にできなければ蒸らしは失敗だ、と考えられているようですが、「コーヒードーム」が上手くできたかどうかは、抽出の成否にまったく関係がないと思います。

コーヒードームの正体は、お湯と反応して気泡化した二酸化炭素です。二酸化炭素は焙煎によって発生し、焙煎豆には必ず含まれています。二酸化炭素は焙煎が深くなればなるほど豊富に発生すると考えられており、その後時間をかけてゆっくりと豆から放出されます。

したがって、コーヒードームが膨らむか、膨らまないかは、二酸化炭素含有量の問題であり、蒸らしの技術を評価する指標とはなり得ません。もし単純にコーヒードームを綺麗に膨らませたいのなら、高温のお湯、焙煎直後の深い焙煎度合いのコーヒー豆を細かく挽いて抽出すれば、綺麗にコーヒードームが膨らみます。

蒸らしにおいて最も重要なことは「粉全体に適量のお湯が均等に行きわたること」に尽きます。粉全体にお湯が均等に行きわたることで、本抽出にて抽出効率を高めることができるからです。

もし、蒸らしのフェーズでドリッパー内にお湯と触れていない粉があるとするなら、2投目以降の均一な抽出を阻害する原因になります。

ポイントは、蒸らしのフェーズでお湯を注いだ瞬間に均等にお湯を粉全体に行きわたらせ、本抽出フェーズで効率良く可溶性固形分を引き出すことです。

この前提条件を守った上で、蒸らしの時間を計測することも非常に重要です。蒸らす時間については第6回をご覧ください。

(6)注ぎ方(流量・流速・回数・高さ)

注ぐ際の流量・流速も計測すべき重要な要素です。流量とは、ケトルから注がれるお湯の量を指し、流速とはケトルから注がれるお湯の速度を指します。流量・流速はコーヒーの味わいに少なからず影響を与えます。

その理由は、ケトルから注がれる際に発生する水流で、ドリッパー内のコーヒーの粉が均等に攪拌されるか否かで、抽出効率に変化が現れるからです。ドリッパー内のコーヒーの粉を水流によって効率良く均等に攪拌できれば、可溶性固形分を効率良く引き出すことができます。

効率良く攪拌させたいならば、勢いよく注げば良いのでは、と思われるかもしれませんが、あまりにも早い流量・流速では、一部の粉のみ攪拌され、強い水流によってえぐられたフィルターベッドからお湯が抜け出し、結果として抽出液の濃度を薄める結果となります。

流量・流速が遅すぎても、粉が水と触れ合うことなくダマを形成し、未抽出の原因となります。適切な流量・流速とは、ドリッパー内のコーヒーの粉が重力に勝り、ドリッパー内を綺麗に浮遊し、全体が均等に攪拌される状況が理想的です。適切な流量・流速については、本書の中で説明しています。

注ぐ高さは水面から5センチ程度を目安にしましょう。注ぐ高さは、水流の強さに影響を与え、ドリッパー内の攪拌度合いに影響を与えます。注ぐ高さは、低すぎても高すぎても均等にドリッパー内を攪拌することができないので、5センチ程度を目安にコントロールしてください。

以上、抽出において守るべき数字のルールは「豆の重さ」「お湯の重さ」「抽出時間」「温度」「蒸らし」「注ぎ方」の6点です。

美味しいコーヒーを淹れるためには、まずこの6つのルールを守ることを意識してみてください。最適な「数字」は第6回でも簡単に紹介していますが、その理由は詳しく本書の中で解説しています。さらに詳しく知りたい方は、ぜひ書籍をお買い求めください。