サムスン電子は代表的な韓国電機メーカーPhoto:REUTERS/AFLO

韓国電機業界は
“追う側”から“追われる側”に

 近年の韓国経済にとって、半導体やITを中心とする電機産業界は景気牽引の原動力となってきた。1990年代以降、韓国の電機業界は、さまざまな分野でわが国の電機業界を追いかけ、追い越していった。特に、半導体やIT機器を中心にサムソン電子は、韓国政府の支援と果断な意思決定を武器に価格競争を仕掛け、輸出競争力を高めた。

 ところが最近、韓国電機業界の立場は、“追う側”から“追われる側”に変わりつつある。中国や台湾企業が半導体分野などで生産能力を高め、猛烈な勢いで韓国企業を追いかけているからだ。それはかつてのわが国企業と韓国企業の関係を髣髴(ほうふつ)とさせるものだ。

 中国のIT先端企業は、共産党政権の産業補助金政策に支えられ、次世代のテクノロジー開発を急速に進めている。監視カメラシステムや5G通信機器など、中国企業のシェアは拡大基調だ。米国が中国製ITデバイスなどの排除を重視するほど、中国はイノベーション発揮への取り組みを強化しようとしているようにさえ映る。

 こうした動きに対して、韓国企業が同様に対応できるか見えない部分がある。中国・台湾企業の台頭や中国の景気減速の影響もあり、ここへきて韓国の輸出は大きく落ち込んでいる。それに対して、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が企業寄りの政策をとるとも考えづらい。韓国の電機業界が台中勢の攻勢をしのぎ、シェアを維持できるか不確実性は着実に高まっている。