技術革新より優先することがある?
目の前の経営戦略における実質的なCASEの活用

 例えば、独ダイムラーの動きが気になる。

 11月1日付で持ち株会社体制となり、傘下に3つの企業を従える。乗用車を主に扱うメルセデス・ベンツAG、トラック部門のダイムラートラックAG、そしてダイムラーモビリティAGがファイナンスや新規モビリティサービスを担当する。

 今年(2019年)5月には、ダイムラーの経営新体制が発足。13年間にわたりダイムラーの先頭に立ったディーター・ツェッチェ氏(66)から、オラ・ケレニウス氏(49)にCEOの座がバトンタッチされた。

ダイムラーはプレミアムなEVイメージの訴求を進めている。東京モーターショー2019
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ダイムラーはプレミアムなEVイメージの訴求を進めている。東京モーターショー2019にて Photo by K.M.

 新体制において主題となるのは、利益率の向上だ。

 周知の通り、自動車メーカーの営業利益率は10%以下が一般的で、高級ブランドのメルセデスも例外ではない。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などデータサービスなどを主体とするIT大手と比べると大きく見劣りする。

 原因は何か?

 それは、「原価計算の甘さ」にあると思う。言い換えると、開発に対する「コストの積み上げ式論理」と「販価の設定」に大きな矛盾がある。むろん、メーカーによって考え方は多少違うが、業界全体を見渡すと、これが自動車メーカーの現実だ。

 こうした状況に陥ってしまったのは、株式市場における自動車メーカーの評価基準が、台数ベースかつ売上ベースだからだ。大量生産・大量販売型ビジネスとして、より多くの台数を売ることで開発コストの帳尻合わせをすることが、自動車メーカーの経営として定常化してしまったといえる。

 一般常識では理解しがたい、そんな古い体質を「CASEをきっかけ」に一気に転換する。

 これが、自動車メーカー各社のCASEの出口戦略だと思う。けっして、CASEによる「技術革新ありき」ではなく、組織再編を見据えて「CASEが時代を変える」というトレンドを作ったことになる。

 組織再編には当然、部品メーカーの再編も含まれる。

 ホンダの関連企業であるショーワ、ケーヒン、日信工業が事実上、日立オートモーティブシステムズに吸収されたり、トヨタ直系のアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュの合併なども、CASE時代到来を巧みに使った、自動車メーカー主導による原価管理体制の大幅見直しの一環として捉えるべきだと思う。