16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。自身初の本格経営書『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。
どんな組織でも起こる、「伝言ゲーム」が戦略を壊す
組織には「戦略のねじれ」という問題が、必ず発生する。
その事実に気づいたのは、組織の中に必ず起こる「伝言ゲーム」の存在を痛感したときでした。これまでの記事で述べてきたように、組織のオープネス(風通しの良さ)は業績と相関が認められています。では、どうやった組織のオープネスを高めるのか? まずはそれを邪魔するものを取り除く必要があります。オープネスを邪魔する罠、そのひとつが、「トーション・オブ・ストラテジー(戦略のねじれ)」です。
言い換えると「トップから伝えられた戦略・事実がレポートラインにのっとって報告されるうちに、少しずつねじれ、本来の意図とはまったく違う形で現場に下りてくること」です。
これは、伝言ゲームを想像すればわかりやすいでしょう。伝言ゲームでは、きわめて簡単な1フレーズすら、人を通していくうちに、次第にねじれていき、最初と最後ではまったく違う形で伝わっていくことがよくあります。人間のコミュニケーションは、どんな内容であっても本質的には同じであるため、これが組織でも起きます。
トーション・オブ・ストラテジーの問題の根深いところは、大きな組織になると、必ずと言っていいほど、「戦略わかったふりおじさん」(もちろん女性のこともある)が現れることです。戦略わかったふりおじさんとは、メンバーからの質問に対して、よくわかっていないにもかかわらず、「自分の解釈を加えて解説しようとする人」を指します(私もこの呼び方自体はある企業の人から教えてもらいました)。
戦略わかったふりおじさんの多くは自分が優秀であることや、自分が知識豊富であることに高いプライドをもっています。そのため、本当はその時点ではわからないことがあっても、自分の解釈を加えて答えようとしてしまうのです。このとき、戦略や事実は大きくねじれて伝わります。