インフルエンザでもマスクをしない迷惑上司、ウイルスまき散らしの代償インフルエンザの疑いがあるのに職場でマスクをせず、ウイルスをまき散らす迷惑上司の行為は果たして許されるのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

体調不良でも休まない部長。「インフルエンザくらいで休むのは気合が足りない!」と自分のポリシーを社員たちに強要した結果、思わぬトラブルに…。(特定社会保険労務士 石川弘子)

A社概要
都内にある従業員数50名ほどのオフィス機器のリース会社。35名ほどの営業社員はノルマがきついせいか、入れ替わりが激しい。

登場人物
南田一郎:A社の30代営業社員。勤続8年で、営業成績は中の中程度。気が弱く、おとなしいが、真面目な性格なので顧客からの信頼は高い。
西川勝男:A社の50代前半の営業部長。勤続15年で入れ替わりの激しいA社では古参メンバー。仕事は気合と根性だと信じてやまない「ザ・昭和上司」。
東山健太:A社の20代後半営業社員。勤続3年で、営業成績は中の上。お調子者ではあるが、なぜか取引先の受けはいい。
北野宏:A社の大口取引先であるF社の総務部長。40代後半で、A社の担当営業マンである東山をひいきにしている。合理的で先進的な考えの持ち主。

「営業でマスクは失礼だ!」
ウイルスをまき散らす迷惑部長

「はっくしょん!」

 秋も深まったある日の午後、A社の営業部長である西川は、大きなくしゃみをすると同時に、体のだるさを感じていた。11月中旬になり、気温が下がり空気も乾燥してきたせいか、風邪をひいたようだ。

「部長、大丈夫っすか?」

 西川の部下である東山は部長のくしゃみを間近で受けて、内心は不快な気持ちで声をかけた。

「ちょっと風邪ひいたかもしれないな。気合で何とかなる!」
「いやいや部長、マスクくらいしてくださいよ」

 上司に対しても臆せず物を言う東山は、あきれた様子で部長に言った。

 しかし、部長は「営業なのにマスクなんてお客さんに失礼だ!」と言って、かたくなに拒否した。

「そういうの、くしゃみハラスメントですよ!」

 東山は、冗談っぽく言うと「外出してきまーす」と言ってオフィスを後にした。

 二人のやり取りを見ていた南田は、「まったく、他の人に移ったら迷惑なのに…」と苦々しい思いで見ていた。