山登りでたとえるなら、ライバル達は結果の有無にかかわらず、プロとして難しいルートを開拓したり、記録に挑戦していたわけです。僕はといえば登り慣れたルートで楽をして登り、余裕があるからと他の山もイージーなやり方で登っていた。それがチャレンジだと思っているのは本人だけ。メインの戦場であるストリートファイターでは現状維持しかしていないわけです。

 またプレイヤーだけでなく、年を追うごとにオーディエンスのレベルも上がっていました。他のプロたちと比較して、僕のやっていることは物足りない。そう見透かされるようにもなっていました。

 「誰にも負けたくない」。そんな気持ちで飛び込んだプロゲーマーの世界でしたから、自分の状況に気づいたときはショックでした。すぐにストリートファイター一本に集中することにしました。リソースを全て投入し、勝率は一度忘れて格闘ゲームを根本的に理解し直そうと思ったのです。