転職の普及について振り返ると、もともと外資系企業を中心に細々と行われていたものが、1980年代半ばから、金融など「堅い」とされる職種の日系大企業でもまとまった数の中途採用を行うようになった。子会社ではない本社で正社員を中途採用するようになったのは、金融関係では、信託銀行や大手証券会社が早かったように記憶している。

 資産運用ビジネスなどの拡大に伴って、金融工学的知識を持った理系の人材を補充したいといったニーズが典型的だった。

 だが当時は、中途採用者は専門職的な扱いで、元々新入社員で入社していた「生え抜き」の人材とは別の人事処遇をなされる場合が多かった。そもそも中途入社の社員が珍しく、ごく少数派だったこともあり、率直に言って社内では「肩身の狭い」思いをすることが珍しくなかった。

 今、「主要100社」にカウントされるような大企業の3分の1程度が社員の副業を容認するようになったとはいえ、実際に副業を行っている社員はまだ肩身の狭い思いをしているのではないかと推察される。

 現に筆者の知り合いでも、本業に何の支障もないと思われる副業をしていながらも、会社の上司にはもちろんのこと、同僚に対しても副業の事実を隠している人が複数いる。彼らは、副業自体の内容や意義については個人的に満足している。しかし、他の社員と違うことをしていることに対する居心地の悪さを感じることに加えて、人事評価上不利になるのではないかという懸念を持っているようだ。

 「副業」の現状は、1980年代後半の「転職」の状況に近いと判断する。