浦和美園駅_キックボードのライト点灯浦和美園駅の改札前から、エレベーターで1階に降り立つ。アプリでロックを開錠した後は、走行の終了までライトが点灯している Photo by K.T.
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 サッカー好きの私にとって、この駅に降り立って向かう「ラスト1マイル」の目的地といえば一つしかない。Jリーグ浦和レッズの本拠地、埼玉スタジアム2002だ。これまで歩行者専用道路を使って何度も試合の観戦に訪れたことがある。そのたびに徒歩20分以上かかるこの地に適した移動手段はないものかと頭(足)を悩ませてきた。車道を使うと駅からちょうど2kmほど離れており、まさに電動キックボードの使用に適した距離なのだ(現状は残念ながら、試合当日は大変な人混みで危険なため、サービスは提供していないという)。

 だが、出発前に早くもプチトラブル発生。ウィンドのアプリでも地図は見られるのだが、目的地の検索機能は付いていない。スマートフォンを車体に設置することもできず、車道でのスタジアムまでの道順を知らない私は、グーグルマップで経路を覚えてから走行しなければならなかった。

 さらに、ある誘惑が私を襲う。エレベーターで降り立った場所は歩道に当たるのだが、原付のように座席へまたがることなく気軽に足を乗せられる分、駅前のロータリーまでの100mほどをキックボードに乗って移動したくなるのだ。だが、もちろん歩道は走行禁止。料金が時間制ということもあって気は急くが、冷静に車体を押していく。

手信号の再トライ目前で
思わぬハプニングに…

 さて、お待たせしました。いよいよロータリーにたどり着き、数歩足で蹴り出してアクセルレバーを押すと車体が加速。待望の実践的な公道乗車デビューを果たした。

 忘れかけていたが、肝心なのは右左折での手信号の再トライだ。スタジアムまではロータリーを出て200mほど真っすぐ進み、ファミリーマートの角で左折に成功すれば、あとは大通りを直進するのみでよい。問題は左折だ。手信号なのだ。

 速度計は時速17kmほどで安定している。ファミマが近づいてきた。緊張が走る。左腕をさっそうと水平に上げ、後続車に手信号で左折を知らせようとしたその瞬間……また予想外のことが起きた。目の粗いダークグレーのごつごつしたアスファルト道に出ると、激しい振動が車体を襲い、安定感が失われて左手を離すどころではなくなったのだ。

 自転車や原付なら難なく片方の手だけで運転できる私でも、キックボードでは難しく、やはり両手でしっかりハンドルを握っていないと安定感が保てない。この日は雨が降った翌日で道路も滑りやすそうだった。学生時代に原付で走行中、雨天後のマンホール上で滑って転倒し、ジーパンの膝に10cm大の穴を作った経験がある私はビビりまくり。結局、交差点に至る前にスピードを落とし、歩道に乗り上げ車体を押してから、再び大通りを走行する形を取らざるを得なかった。

 市川の試乗会の最新モデルよりタイヤが一回り小さい影響もあったようだ。やはり走ってみないと分からないことは多い。ちなみに右手はアクセルレバーを押していなければならず離せないので、右折時は左腕の肘から先を垂直に曲げ、手の指を真上に上げる形を取ることになる。

 気になって調べてみると、欧米でも手信号(英語でHand Signal)の在り方は議論を呼んでいるようだ。国・地域ごとに法律は異なるが「手信号は簡単に習得できます」とうたっているメーカーもあれば「ルール通りに手信号を出そうとする方がバランスを崩して危ない」という意見もある。方向指示器を付けた機種は世界でも見当たらないようで、ルール化の難しさがうかがえる。

 こうした問題の解決の一助として、独アウディは2020年中に片方の手だけでも運転できる新機種「e-tron スクーター」の生産・販売を行う予定だという。確かにこれなら手信号は出しやすそうには思えるが、同機種に依存するわけにもいかず、根本的な解決策になるとは思えない。