ヤマトの営業利益率はなぜ低いのか?

 このようにヤマトホールディングスは企業規模が大きい会社で、今や売上高は業界ナンバーワンです。であるにもかかわらず、稼ぐ力(営業利益)が低いのはなぜでしょうか。

 そもそも宅配業は、一定規模の宅配個数を請け負わないことには、配送効率が悪くなるため、利益が出にくいビジネスです。

 例えば、大阪から東京までの荷物の配送をイメージすればわかりやすいでしょう。

 1個の荷物を運ぶのと10個の荷物をまとめて運ぶのとでは、売上は10倍違いますが、配送に要するコストはほぼ同じです。下記のイメージ画像を見てください。

「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本

 そのため、多くの顧客から宅配の依頼を受ける大規模な宅配業者のほうがスケールメリットを享受できるため、利益は出やすくなります。

 実は、2013年3月期までは、ヤマトホールディングスのほうが営業利益率は高かったのです。

 ところがその後、SGホールディングスが右肩上がりで営業利益率を伸ばし、あっという間に逆転しました。右肩下がりのヤマトホールディングスとは対照的です。下記の画像を見てください。

「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本

 直近の2019年3月期は、宅配料金の値上げでやや持ち直したものの、SGホールディングスには遠く及びません。

 SGホールディングスによる営業利益率の逆転劇は、業界の常識とは逆張りの戦略の結果といえます。

「規模を追い求めることで利益を増やす」という宅配業における常套手段をとらず、配送単価の見直しとそれに伴う顧客の選別をすることで、稼ぐ力を高めていったのです。

 具体的には、アマゾンからの撤退が最も大きな要因です。