佐川がアマゾンから撤退した「合理的」な理由

 アマゾンで買い物をするのは個人客が中心です。個人宅への宅配は、不在時の再配達などが一定割合で発生してしまうため、非常に手間がかかります。

 特に近年は、核家族化、共働き世帯の増加により、日中の不在割合も増加しています。手間がかかれば、人件費も余分に発生してしまいます。

 アマゾンからの配送依頼は圧倒的な数です。宅配業者にとってアマゾンはたくさんの仕事をくれる上顧客といえます。上顧客からの要求をむげに断れないのは世の常。手間がかかるとしても宅配料金はなかなか上げられず、逆に、圧倒的な依頼数量を交渉材料に、宅配料金の値下げを迫られてしまうのです。

 SGホールディングスは、宅配料金の折り合いがつかなかったため、アマゾンとの取引を解消しました。巨額の売上をあえて手放したのです。苦渋の決断だったと思いますが、この勇気ある意思決定が営業利益率を伸ばすきっかけになりました。

 アマゾンからの撤退は2013年。ちょうど両社の営業利益率が逆転した時期と重なります。SGホールディングスは効率がいい企業間配送に注力し、営業利益率を伸ばしていったのです。

 一方、ヤマトホールディングスは、SGホールディングスのアマゾン撤退の受け皿となり、売上が飛躍的に拡大していきました。ところが、ヤマトホールディングスは自社の宅配ドライバーだけでは大量の荷物をさばききれず、外部の運送業者に再委託せざるを得ない状況に陥りました。

 外部業者に委託すると、外部業者のマージン(儲け)が乗った配送料を請求されるため、自前の配送より余計にコストがかかり、利益が圧迫されます。

 さらに、従業員への未払い残業問題や、引っ越しサービスでの水増し請求問題など、コンプライアンス上の問題が次々に明るみに出ました。

 過度な業務受け入れで現場の負担が増大し、業績が落ち込み、そして、業績回復のプレッシャーで不正に手を染めるという、負のスパイラルにはまってしまったのです。下記の画像を見てください。

「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本

 今や営業利益率だけでなく、営業利益の金額もSGホールディングスがヤマトホールディングスを上回っています(ヤマトホールディングス:583億円、SGホールディングス:704億円)。