権力なく権威のあった昔の上司
権威なく権力だけの今の上司
さて、管理職の立場はいかに保たれているかについて、権威と権力の2つの側面から考えてみたい(なだいなだ著『権威と権力』〈岩波新書〉参照)。
権威とは尊敬を集めており、職務での実績などを周囲の人が重んじて、おのずと言うことを聞いてしまうような力。権力とは組織の役割分担の中で与えられる、言うことを聞かせる力である。
平成以前の過去の管理職は今ほどの「権力」を持っていなかった。成果主義以前の時代である。今ほど評価と昇進や昇給がダイレクトに結びついてなかった。一方、経験と人脈の蓄積からなる上司と部下間の仕事力の差はあり、権威性は今より相当高かった。権力はないが、権威はあったのである。
かたや現在、権力は強くなっている。管理職は「部下を評価する」という強みを持っているが、権威性の失墜ぶりはすさまじい。尊敬されない者が権力だけを振りかざすことのできる状況である。厚顔無恥の人はそんな状況でもためらわずに権力の行使をするだろうが、むしろ良い人であればあるほど謙虚になり、自らが手にした身の丈に合わない権力に恥じ入ることになるだろう。何も言えなくなってしまった人はいい人かもしれない。しかし、ここでひるんでしまってはいけないのである。
正解は誰も知らない
上司は上手に「使う」もの
正しい答えは誰も知らないのだ。ならば、上司たる者、今までのやり方ではやっていけないことを十分に承知し、理解し、新しい叡智をみんなから集めて新しい試みにチャレンジをする。その一方、できる範囲で過去のセオリーを使いながら、一定の成果を保持し続ける、といった変革と維持の両面を重視する組織づくりをリードする役割を担わなくてはならない。