(2)人生の中で会社の占める率が劇的に低くなった

 人と組織の関係も大きく変わった。昔は会社が起点であり終点だった。外出でどんなに遅くなっても、「直帰は不可」という会社が多かった。朝礼が8時45分に始まり、課長がみんなの予定を聞き、行動確認をする。夕会でまとめをし、そのあと一緒に飲みに行って語り合いながら、仕事のノウハウを共有する……などという風習は、多くの会社ではおおむね平成の初め頃で終わっているだろう。会社と社員の接触時間が劇的に少なくなり、仕事は社員にとって「ワンオブゼム」にすぎなくなった。

 そして、(1)や(2)であるがゆえに、管理職は「正解を教えられない人」になった。これまでは過去のセオリーと自分の経験に基づいて、「正しい答え」を導き出し、それを飲み会の席で「部下に教える役割」を担っていたが、今や何が正しいかが管理職自身にもわからないし、共有する時間も少ない中で、状況に応じた正しい考え方や手法を教えることができなくなっている。

変化に敏感な上司は自信喪失気味、
鈍感な上司は過去のセオリーで教育

 かつては、若手が悩みを相談しにきたら、自分の経験を踏まえて的確にアドバイスしたり、激励したりすることができた。しかし、今は自分の若い頃とあらゆる面で状況が異なるため、格好良く先人の教えを示すことができない。こうした変化に敏感な管理職は、忸怩(じくじ)たる思いを抱えているであろう。いい人であればあるほど、そしてきちんと管理職の仕事をしようと思う人ほど、社会や組織や新しい技術をフォローできていないことを深く恥じている。そのような管理職は、明らかに自信喪失気味である。

 一方、鈍感な人は過去のセオリーをいまだに正しいと信じて、状況の変化などおかまいなしに自分が過去やったやり方と同じ方法で教育する。しかしながら、「足で稼ぐ営業」のようなことでも、徹底してやり切れば、迷って何もできていない人よりもずっと効果が上がる。そのため、一瞬成果が上がり、いまだに自信満々だったりする。パワハラ管理職の烙印を押されることもあるが、成果が出ている(と思っている)ので本人は気にしていない。