泥酔した社員社員が泥酔した挙句、売上金が入ったバッグを紛失。その弁償責任は果たして社員にあるのか、それとも会社にあるのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

年始の初売りセールの売上金180万円が入ったバッグを居酒屋で紛失した店長。同席した社員と2人で弁償することに。しかし、その後、驚きの事実が発覚し…(特定社会保険労務士 石川弘子)

S社 概要
洋服や雑貨などを扱うセレクトショップを運営している。20代向けのオシャレな商品を取り扱っており、店舗数は都内に5店舗。最近はネット販売も好調。

登場人物
太田一郎:S社の社長。40代後半の男性で妻と高校生の娘がいる。20代後半で創業し、事業を拡大させてきた。気は短いが情に厚い。
長井健二:S社の店舗で店長をしている30代後半の男性。酒とパチンコが好きで、少しだらしがないところがある。バツイチで現在は独身。
細川三男:長井店長の下で働くS社の社員。20代後半の独身男性で、お調子者。要領がよく立ち回りがうまいので社長のお気に入り。
海野ももか:長井店長たちと同じ店で働くアルバイトの20代女性。モデルの卵で、バイトとモデル活動を両立している。美人でサバサバとした性格。

店長が泥酔して紛失した
180万円を3者で負担

「なんで売上金をカバンに入れたまま飲みに行ったんだ!!」

 1月中旬の月曜の午後、S社の店舗バックルームで鬼のような顔をして怒鳴る太田社長の前で、店長の長井と社員の細川は小さくうなだれていた。

 前日は初売りセールの最終日。閉店後、店長は社員の細川とアルバイトの海野を誘って打ち上げと称して飲み会をしていた。

 酒好きの店長は、セールが終わった安堵感からか、つい飲みすぎて泥酔し、売上金を入れた小さなバッグを居酒屋に忘れてきてしまったのだ。

 翌朝、売上金を無くしたことに気づいた店長が慌てて居酒屋に問い合わせたものの、「特に落し物は届いていない」ということだった。

 バッグにはセール中の売上金180万円と店の通帳が入っていた。