米国によるイラン軍司令官の爆殺で年初の株価は波乱の幕開けとなった。一方、昨年の暮れあたりから世界景気の底打ちの兆候かと思われる変化も一部に見られ、米中の貿易戦争が「第1段階の合意」の調印に至ったことと相まって、景気や株価の先行きへの警戒感が薄れている。
果たして2020年の景気と株価について楽観的な見通しで良いのか、あるいは警戒的なスタンスを強めるべきなのか、意見が分かれる状態だ。
舞台の上でどう動けば良いのか混乱した時には「ゆっくり遠くを見る」。これは狂言・能楽師、野村万之丞の言葉だ。筆者は2020年中か遅くとも2021年には米国が景気後退局面に入り、中国の経済成長率の下方シフトも加わって、日本は景気後退となるだろうという中期予測を昨年から維持しているが、より重要なのは長期の大局観だと考えている。
その観点から2020年代の日本株の動向について、日本株は1990年代のバブル崩壊で失われていた右肩上がりのトレンドを回復し、2020年代には日経平均で3万円を超えるという長期楽観の展望を昨年2度に分けて述べた(下記参照)。
●「日経平均は2020年代に3万円回復か、長期右肩上がりトレンド復活の現実味」2019年11月7日
●「日本株は分散・長期保有が報われる新時代へ、逆張り投資でリターン向上」2019年12月17日
こうした展望が実現する前提は日本の企業部門全体の利益が、景気循環的な変動はあっても、長期趨(すう)勢的に増加トレンドをたどることである。そこで今回は企業利益の動向をもう少し詳しく見て、日本企業の利益動向の回復ぶりを確認してみよう。