昨年から今年にかけて筆者が述べてきた米国、日本、世界経済に関する2020年までの中期的な判断に変更はない。すなわち2020年中に世界経済は景気後退に入り、日米の株価も相応に下落すると考えている(補注1参照)。
実際、各種の経済データは、景気後退局面に移行する確率が上昇していることを示している。今回は、次期景気後退期を超えて長期的に日本株がどの程度上昇するか、もっと具体的に言うと例えば日経平均で3万円という水準にいつ頃到達しそうか考えてみよう。
「利回りへの飢餓」に苦しむ投資家
その前に景気後退を示唆する経済データが増えつつあるにもかかわらず、株価が日米ともに下がらず、10月に入ってからはむしろじり高推移となっている現状についてコメントしておこう。
市況解説としては「米中貿易戦争の妥結期待」「米国の金融緩和期待」が株価を支えてきたと語られている(ただし米連邦準備理事会=FRBは10月30日の金利引き下げと同時に、先行きは利下げ休止の示唆に転じた)。しかしそれ以上に、日米ともにこれまでの量的金融緩和政策で国債を中心に長期債券が中銀によって大規模に保有され、国内総生産(GDP)の名目成長率より長期国債利回りの方がずっと低いという超低金利が続いていることの効果が大きいと筆者は考えている。
名目GDP成長率(2017年以降の平均値)から10年物国債利回りを引いたスプレッドは日本が「1.5%-(-0.135%)」で1.635%、同様に米国は「4.7%-1.8%」で2.9%だ(10月25日現在)。この結果、株価全般は名目成長率と同じだけ上昇すると期待すれば、投資家が株式投資にシフトする効果が生じている。
これを債券投資の立場から見ると、投資家層に「利回りへの飢餓」が生じていると言える。先行きの景気後退を示唆する経済データがこれだけ増えれば、以前ならば長期の国債や優良格付け社債などへの株からのシフトが進み、株価の下げが始まったのだろう。
ところが今や10年物米国債は利回り1.8%にすぎず、日本ではマイナスである。とりわけ法人投資家にとっては「目標利回り」をクリヤーできるような水準ではない。その結果、やむを得ず不動産投資信託(REIT)や高配当利回りのバリュー株、さらに日本では外債などへの資金シフトでしのいでいるのだと考えられる。
もっとも、このような「名目成長率>長期金利」それ自体が、特に米国では企業部門の債務増加、債務過剰企業の増加をすでに引き起こしており、クレジットサイクルの調整・局面が遠からず起こるのは不可避だろう。