スマホの世界的な製造地だった中国だが、現在次々と海外メーカーが拠点を移している。その理由として、人件費の高騰や中国メーカーの台頭などがあるといい、多くの外国メーカーはベトナムへ移転しているという。そんなスマホ製造の現状やユーザーへの影響を携帯電話研究家の山根康宏氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
大手通信機器メーカーが
続々と中国から「脱出」
「世界の工場」と呼ばれ、外国企業や工場の進出を受け入れてきた中国。安くて豊富な労働力や鉱産資源、広大な用地などをウリに世界中に製品を届けてきた。特に電子機器の製造はラジカセからスマホまで担ってきた。
事実、アジア開発銀行の2015年のリポートによると、2000年から2014年の間に、電子通信機器や医療機器などのハイテク製品の、アジアでの輸出における中国のシェアは9.4%から43.7%へと拡大している。
しかし現在、そんな中国から続々と海外スマホメーカーが工場を移転させているという。サムスンは2014年にベトナムに新工場を建設。昨年10月には中国の恵州で稼働していたスマホ生産拠点を閉鎖し、中国での携帯電話製造から完全に撤退した。
グーグルも生産の一部を中国国外に移そうとしている。一部報道によるとスマートフォンの新製品「Pixel 4」を、ベトナムの工場で生産するという。この他にも、ソニーが昨年3月に北京を離れ、タイの工場に生産拠点を移すなど、多くのメーカーが中国から離れている。その理由を山根氏はこう分析する。
「生産拠点を分散したいという思惑に加え、中国国内の人件費の値上がりや米中貿易戦争が主な理由でしょう。移転先でベトナムが多いのは、人件費の安さもありますが、サムスンがいち早く移転したことによる物流網の発達が大きい。また、米中貿易戦争によって、『中国製』だと都合が悪くなる可能性を考慮しての判断でしょう。よくいわれる中国共産党がうんぬんという理由はなく、対外的な理由であるとみています」