実刑判決が将来に与えた影響
飲料ビジネスを新たな活路にしたかった?

 民間軍事会社の代表として、米国内外でさまざまな仕事をしてきたテイラー氏だが、本業以外でもメディアへの露出があった。

 米マサチューセッツ州ボストンから北西30キロに位置する高級住宅地に邸宅を持ち、3人の子どもを育てたテイラー氏は、地元ではちょっとした有名人としても知られていた。地元紙ボストン・グローブが10年9月に掲載した地域の高校スポーツに関する記事では、名門高校のアメリカンフットボール部でコーチとして生徒に指導するテイラー氏が写真付きで紹介されている。

 テイラー氏は08年、息子が通っていた名門私立校ローレンス・アカデミーでアメリカンフットボール部のヘッドコーチに就任する。民間軍事会社の経営と高校の部活の指導という、いわば二足のわらじを履く格好となったが、テイラー氏の就任後にローレンス・アカデミーのフットボール部は躍進を続け、就任から1年後には7人の部員がNCAA1部の大学に進学している。テイラー氏はローレンス・アカデミーで3シーズン、ヘッドコーチとしてアメリカンフットボール部の指揮を執った。

 さらにテイラー氏は14年、「ビタミン1」という飲料メーカーを立ち上げている。これはペットボトルに入ったビタミンドリンクのブランド名で、同社のプレスリリースでは「元特殊部隊員のマイク・テイラーは、猛暑のイラク北部をヘリコプターで移動中に正しい水分補給について考え始め、のちに3人の息子たちと残味覚なしに水分と栄養が補給できる商品を開発することになった」と会社設立の経緯を紹介している。

マイケル・テイラー氏
ジュリアン・エデルマン選手と肩を組むマイケル・テイラー氏(左) 写真:「ビタミン1」社のフェイスブックページより

 ビタミン1は子どもたちにアメリカンフットボールを体験してもらうイベントの協賛も行っている。同社のフェイスブックページでは、昨年7月21日に米マサチューセッツ州で行われたイベントに、ゲストとして登場したNFLのスター、ニューイングランド・ペイトリオッツのジュリアン・エデルマン選手とテイラー氏が並んだ写真が投稿されている。実刑判決を受け、AISC社の将来に危機感を抱いたテイラー氏が、新しいビジネスに再起をかけていたというのは考え過ぎだろうか。

 いくつもの顔を持つテイラー氏は、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のインタビューに対し、「不公正な司法制度の人質だったという意味では、ゴーン氏に共感を抱いた」と語っている。昨年末の逃亡劇に協力したのは、自身のキャリアの中で最も輝いていたグリーンベレー時代に過ごしたレバノンという「居場所」に再び戻り、あの頃の自分を取り戻したかったからではないだろうか。