「心に風が通る」意思決定をしているか?

山口:僕がすごく好きな話があって、去年の4月に「人工知能をドローンに搭載して、人を攻撃する」という研究を、グーグルが国防総省と始めると発表したことがあったんですけど、そのときグーグルから退職者が続出したんです。

防衛産業ってアメリカではものすごい巨大なので、うまくいけばめちゃくちゃ儲かるビジネスになる。でも、「そういう問題じゃないのよね」と思う人が続出した。

もともと法律に抵触しているわけじゃないから、ルール上の問題は起こらないんだけど、退職せずに残っている人たちからも「このプロジェクトはやめてくれ!」「子どもたちに自分が働いている会社はこんなに立派な会社なんだって言えなくなる」という嘆願書が出されて、ものすごい数の署名も集まって、最終的には経営陣が謝ったんですよ。

そのとき経営陣が「よくぞ言ってくれた。危ないところだった。自分たちは取り返しのつかないことをやってしまう可能性があった。ありがとう」って従業員に対して言ったんです。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】大事な意思決定こそ「頭」ではなく「心」で決めろ!山口周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『ニュータイプの時代』『知的戦闘力を高める 独学の技法』(以上、ダイヤモンド社)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)など。

でも、話はそれだけでは終わらなくて、グーグルが「そのプロジェクトは断る」って表明したら、今度はアメリカ議会で大問題になって「グーグルは、もはやアメリカで最先端の人工知能の研究組織なのに、軍に協力しないのか!」「あいつらはふざけている!」ということにもなったんです。

でも、僕はすごくいい話だなと思っていて、やっぱり最後は「心に風が通っているか」ということだと思うんですよ。

塩田:「心に風が通る」その表現、超いいですね!

山口:だって、ものがわかっていないおじいさん、おばあさんに「二重で同じ保険商品を売る」なんて話もありましたけど、それをやってるときに「オレ、心の中に清々しい風が吹き抜けてるよ」って思わないでしょ、絶対。

箕輪:絶対、思わないですね。でも、まじめで、硬い企業ほど「そんなことをやったらネットで炎上するでしょ」という「どう考えてもアウトなこと」をやっちゃうときがある。心は問われてなくて、頭だけで考えているから、そうなるんでしょうね。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】大事な意思決定こそ「頭」ではなく「心」で決めろ!箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
幻冬舎編集者
1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹・著)、『逆転の仕事論』(堀江貴文・著)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス)など。

塩田:まじめだからこそ、「この範囲ならOKなんだよね」と考えて、行き過ぎちゃう。

山口:イメージがよどんでいるというか、不協和音が出てるような感覚のときって、だいたい後でおかしなことが起こる。これは経験的にそう思いますね。

塩田:いや、ホント。愛で何かを決めたときは、やっぱり清々しいですもんね。

箕輪:まさに、心に風が通ってる。