青息吐息の状態が続く国内の鉄鋼関連業界の中で、連結売上高2兆円を超える鉄鋼総合商社のメタルワンは、攻めの姿勢を崩さない。あらためて、その真意を聞く。

Photo by Shinichi Yokoyama

──2012年3月期は、連結売上高が前期比2%減の2兆4730億円、純利益が23%減の144億円だった。その一方で、向こう3年間で新興国を中心に500億円の投資に踏み切る新中期経営計画を発表した。その背景にあった問題意識は、どのようなものか。

 私も含めて、人間というものは、自分に都合よく物事を解釈したがるものだし、「もう少し事業環境がよくなれば……」と思いたがる。

 だが、08年秋のリーマンショック以降は、事業環境は大きく様変わりした。もはや、08年以前の世界に戻ることはないと見ている。

──今年4月末に世界鉄鋼協会が出した13年の鋼材消費予測によると、リーマンショック前の07年に比べ、先進国は86%である一方、新興国は145%に達する。

 ちょうど2000年を境にして、世界の鉄鋼需給の主要プレーヤーは、欧米や日本などの先進国から、中国、インド、ブラジルなどの新興国に変わってしまった。

 日本は、人口が減少して少子化に向かうトレンドがある以上、国内の需要が増えることはなく、じわじわと減っていく。だが、何も悲観的に見る必要はなく、「世界の鉄鋼業は成長産業である」という認識を持たなくては、前向きな発想が出てこない。国内で需要の回復を待つばかりでは仕方がない。

 鉄というのは、どこの国でも発展段階で必要になる基礎素材である。将来的には、需要が伸びる新興国で成長が見込めるインフラ、エネルギー、自動車などの分野にいち早く手を打つ。現在は、国内での利益が海外を上回っているが、14年度には利益の60%を海外で稼ぐようになる。