死体遺棄に走った生活保護ケースワーカーに、日頃から手を差し伸べる同僚や上司はいなかったのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

死体遺棄ケースワーカーを
助ける人はいなかったのか

 2019年6月、京都府向日市の生活保護ケースワーカー・Y氏(当時29歳)が、死体遺棄容疑で逮捕された。現職の公務員による犯罪であるばかりではなく、その遺体はY氏の担当していた生活保護受給者・H氏(当時55歳)と同居していた女性のものであり、H氏が自分の担当ケースワーカーであるY氏を精神的に支配し、遺体遺棄をさせたという異様な関係にあったことから、事件は日本社会の関心を集めた。

 事件への関心は、同年7月の「京都アニメーション」スタジオ放火事件によって立ち消えた形となったが、その後捜査や取り調べが行われ、10月からはH氏・Y氏およびH氏と共犯したZ氏の公判が開始されている。Y氏の公判は12月に結審し、本年1月に判決の予定であった。しかし現在は、結審が3月初旬、判決は3月末の予定となっている。

 公判を通じて明らかになってきたのは、向日市の生活保護の現場の機能不全ぶり、各ケースワーカーの孤立、そして不適切な生活保護制度の運用であった。元暴力団員とされていたH氏は、実際には暴力団との縁を切っておらず、現役の暴力団員である疑いが濃厚であった。

 申請時点で暴力団を脱退していない場合、生活保護の対象とならないわけではないが、「すぐに保護しなくては生命に関わる場合に限る」など、厳しい制約が課せられている。保護費は暴力団の活動資金ではないからだ。しかしH氏は向日市で、生活保護で暮らすことができた。そして暴力団との関係を維持していた可能性があり、暴力的な言動や“洗脳“のような手法でY氏を支配していた。

 とはいえ、死体遺棄に関しては、Y氏は結果として手を染めた。被害と加害が入り組んだ状況を、どう読み解くべきであろうか。筆者の見方では、公判の現在の焦点もこの点にある。

 生活保護の現場と運用に詳しい吉永純さん(花園大学教授、社会福祉学)は、「担当者に任せていた」という点を、最大の問題として指摘する。