新型肺炎拡大で高まる政治家へのプレッシャー、自国優先が国際協調を阻むか自国優先主義では感染拡大阻止は難しい。写真右から習国家主席、安倍首相、トランプ大統領。2019年6月開催のG20大阪サミットで撮影 Photo: REUTERS/AFLO

 新型コロナウイルスが突如としてニュースになるよりも前に、世界保健機関(WHO)の報告書は次のように警告していた。

 世界は「急速に拡大する病原菌による悪性の呼吸器疾患パンデミック(大流行)」に対する備えができておらず、5000万~8000万人が死亡し、パニックと動揺が引き起こされ、グローバル経済と貿易に深刻な影響が生じる可能性がある、と。

 過去200年余りの経験が示しているように、各国政府による協調的な対応がなければ、こうしたパンデミックに効果的に対処することはできず、たとえそのように対応したとしても、各国市民が政府を信頼し、その指針を遵守することが必要になる。ここから、「COVID-19」と呼ばれる新型コロナウイルスへの対応において、政治指導者が直面する3つの課題が浮かび上がる。

パンデミック・リスクと戦う際の大原則

 第1の課題は、政治家は、断固たる姿勢を示すとともに、疑い深い大衆に対する丁寧な説明を要する科学的な措置を採用するという両面を兼ね備えなければならない。

 例えば、インド、ナイジェリア、日本、米国といった国々は最近、自国の空港に到着するすべての旅客を対象に、非常に目立つ体温チェックを行うという措置を導入した。

 だが、旅客が発熱していても、解熱剤の服用によって症状は簡単に隠せてしまう。

 また、中国の研究者らによれば、COVID-19は、保菌者の発熱が始まる最大24日も前から感染力を有するのではないかと考えている。そこで英国政府は、自国に到着するすべての旅客に対して、空港を離れた後で症状が出た場合にどうすべきかを周知することに力を注いでいる。

 さらに深刻なのは、トランプ米政権が1月31日、過去14日間に中国に滞在したすべての外国人について、米国市民または永住者の直接の親戚でない限り入国を禁止する暫定措置を発表したことである。他にも類似の措置をとった国は多いが、その効果は、意図したものとは正反対になりかねない。

 中国を締め出すことは正当化できるように思えるかもしれない。だが、各国政府との信頼関係を築くことなく一方的にそうした措置をとってしまえば、規模の小さな中国の近隣諸国など他の国々が、自国でのウイルス感染が判明しても通告しない可能性が高まる。締め出しとそれに伴う大きな経済的犠牲を恐れるからだ。