会社から秘書がいなくなる――。そんな時代が遠からぬ先に来るかもしれない。AIにとって代わられるという話ではない。従来、秘書が行っていた業務を自ら行う社長や役員が増えてきているのだ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)
アクション分布に
経営実践の課題がみえる
筆者は、上場企業から中堅企業までさまざまな企業の役員や管理職を対象に、経営実践スキルを向上させる演習プログラムを実施している。業務の優先順位を決め、パフォーマンスを上げる演習では、自ら実施する10のアクションを付箋に書き出すことから始める。
重要度の大、中、小を付箋の右下に記入、緊急度の大、中、小を付箋の左下に記入して、アクションプランシートに張り出す。重要度と緊急度の分布の状況から、アクションの優先順位を見極めたり、パフォーマンスを高めるたりするための課題を見極める演習だ。
最も多い分布が、表1のように、右上から左下にアクションが流れる分布だ。重要度大で緊急度大のアクションから、重要度小で緊急度小のアクションまで、バランスよく分布されている。
しかし、役員の場合には、表2のような分布になる参加者の割合が格段に高まる。職位が上がれば上がるほど、表2の分布に近づく。右側にアクションが集中している、重要度大の業務ばかりを抱えているという状況だ。
ただし、この分布の場合には、重要度が低い業務が、部下や秘書にきちんと委譲できているかどうかが、組織としてのパフォーマンスを高める観点からポイントになる。
部下や秘書への業務の委譲がうまくできていればよいし、委譲できていないと、この分布の役員は、社内業務が滞りかちで、例えば社内の管理部門から評判が悪い役員だったりする。