自らアクションする
役員が増えている

 ところが最近、表1の分布を示す役員が徐々に増えている。重要度小の業務も抱えているケースが増えているのだ。こうした演習参加者に聞いてみると、重要度小の業務を自らアクションするように意識しているというのだ。大きく分けると以下の理由だ。

・秘書に指示している時間で、自分で実施できるのであれば、自分でアクションするように心がけている
・現場のプロセスを肌身で感じるためには、自ら手を下した方がよいので、可能な範囲で自らアクションするようにしている
・人員不足で、秘書が兼任になり他業務を担うようになったので、自分の依頼業務を秘書が対応できるまでに時間を要することがあり、それまでに完了させたいアクションは自分で実施している

 中には、来客からの訪問依頼をメールで受けて、会議室の予約を自分でシステムに入力したり、経費申請も自ら行う役員もいる。システムの機能が進化して使い勝手が良くなる中で、秘書を呼んで説明したり、メールで指示したりする時間よりも、自らシステムに入力する方が早いというわけだ。

 重要度小の業務を自らアクションする役員は、比較的年齢が若く、過去に他社で勤務した経験があるなど、多様な業務に従事したことのある人が多い。また、「こんな小さな仕事を、社長や役員の自分が行っては沽券(こけん)にかかわる」という意識を持たない人が多い。

 大企業の中途採用は一般化し、役員としての受け入れも加速している。シーメンスインダストリーソフトウエア日本法人社長などを経て東芝執行役常務に転じた島田太郎氏や、SAPジャパン社長から富士通常務執行役員に着任する福田譲氏は、それぞれ一緒に仕事をさせていただいたが、いずれも、私が演習しているさまざまな企業の役員に比べて、自らアクションする度合いが高かった。

 事務処理システムの普及とユーザーインターフェースの改善、現場志向の高まり、業務進捗加速の要請により、社長や役員自らがアクションする業務範囲は広がり、自らアクションすることをいとわない社長や役員が増えていく。今後、秘書に依存する度合いは、どんどん低下していくのは間違いないだろう。