老後破綻する夫婦退職金が多くても老後破綻する可能性のある夫婦は少なくないようです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 定年退職する数年前から老後の暮らしを心配し、家計相談に来られる人は「老後資金2000万円問題」が大きな話題になる前からいらっしゃいました。ただ、やはり「2000万円問題」後から、その人数は増えたように感じます。

 単純に年金保険料をこれまで払っていなくて、老後に年金をもらえないことに焦っている人。退職金をあてにしていたのに思いのほか少ないことが分かり、焦っている人。住宅ローンを一括返済しようと思っているけれど、そうすると老後にお金がいくらも残らなくて焦ったり困ったりしているなど、状況はそれぞれ違います。

 中には会社の退職金制度がしっかり整っているのに、定年までに貯金をすることができず、また膨らんだ生活費を圧縮できないため、老後生活に不安を抱えている人もいます。生活費を下げられれば何の問題もありませんが、それができないせいで老後資金が数年しか持たないのです。改善すべき点が明らかなのに、実行できないことが残念でなりません。

夫婦2人暮らしで支出は月65万円
定年直前なのに貯金は100万円だけ

 先日、退職後の家計について相談に来た会社員のHさん(57)もそうでした。Hさんは2人のお子さんが独立され、現在は妻(55)と2人暮らしです。お子さんが高校生くらいの頃からHさんは役職に付いたことで収入が増え始め、それに伴って支出も増えていきました。そして、お子さんが大学を卒業し、独立された後もその支出額は減ることがありませんでした。

 現在のHさんの収支がどうなっているかというと、手取り収入約58万円に対し、支出は約65万円。そのうち約20万円が住宅ローンの支払いで、あと15年続きます。完全な赤字状態ですが、ボーナスが年間で300万円ほどあるため、そこで補填ができてしまっています。