2018年と比べた19年の一般労働者の月間総実労働時間の減少

出所:厚生労働省「毎月勤労統計」を基に筆者算出出所:厚生労働省「毎月勤労統計」を基に筆者算出

 働き方改革の一環として2019年4月から時間外労働の上限規制が施行された(中小企業は20年4月から)。これによって時間外労働は原則として月45時間、年360時間を超えることができなくなった。しかし、これには労使合意に基づく例外もあり、その実効性を疑問視する声も上がっている。実際に新しい労働時間規制は労働時間を短くする効果があったのだろうか?

 労働時間の減少を捉えるために18年以前と19年以降の労働時間を比較してみよう。利用するのは厚生労働省が作成している毎月勤労統計だ。これは月当たりの労働時間が記録された調査であるため、労働時間の変化を比較的高頻度で捉えられる。また既に前年同月比などの指数化された数字が使われることが多いが、政府統計のウェブサイトであるe-Stat上で公開されている「実数・指数累積データ」の12年1月から19年11月のデータを加工して分析した。

 労働時間には季節性があり、加えて労働者数が多い事業所は少ない事業所に比べ労働時間が短いという特性もある。これらの点を考慮し、フルタイムで働く一般労働者に限って回帰分析を行うと、18年に比べて19年の月当たりの労働時間は約2.9時間短いことが分かった。ちなみに18年1月の500人以上が働く事業所の月当たり平均労働時間は158.3時間だ。これを基準にすると労働時間は1.8%減ったことになる。

 もちろん、この18年から19年にかけての労働時間の減少を新たに施行された時間外労働の上限規制だけに帰することはできない。仮に新しい規制が施行されなかったにしろ労働時間が減っていた可能性を排除できないからだ。しかしながら18年以前の労働時間の動きを見てみると明確なトレンドを見いだすことはできず、18年から19年にかけての労働時間の減少は際立っている。この急激な減少はやはり時間外労働の上限規制の影響とみるのが適切ではなかろうか。

 1週間当たり1時間にも満たない小さな効果ではあるものの、時間外労働の上限規制は実際の労働時間を減少させるのに役に立っているようである。

(東京大学公共政策大学院教授 川口大司)