お願いも頼み方次第! 「ノーをイエスに変える」伝え方
翌日。
さっそくマリアに教わった技術を使って、まずは先輩に協力をお願いすることにしたヒナ。
今までであれば…
「丸ちゃん先輩っ 仕事ひきうけてください!」
と、自分の頭の中をそのままコトバにしていたはず。
この伝え方では、「仕事をひきうけたくない」と思っている先輩の気持ちを変えることはできないでしょう。
マリアは、お願いされた相手はどう考えるのか、ふだん相手は何を考えているのか、「相手の頭の中」を想像するようにとヒナに伝授していました。
そこで、ヒナは自分の頭の中のコトバをぐっとがまんして、先輩の頭の中を想像してみます。
「丸ちゃん先輩はファッションにもこだわりがあるし、デザインセンスが特別と思われたい」
先輩の頭の中を想像したら、あとは相手のメリットと一致するお願いをつくるだけです。
先輩 「どうしてもやりたいなら ほかのデザイナーとやれば?」
ヒナ 「私は丸ちゃん先輩のデザインが好きなんです」
「ほかのデザイナーとやれば」と聞く耳を持たない先輩に対して、ヒナは「私は丸ちゃん先輩のデザインが好きなんです」と切り出します。
「ほかのデザイナーじゃダメなんです。私がやりたいのは丸ちゃん先輩だけなんです」
これは「伝え方の技術」のひとつ「あなた限定」です。
「あなただけ」と相手を特別扱いすることで心を満たし、お願いを聞いてもらえる技術です。
ヒナの頭の中のコトバ「仕事を引き受けてほしい」は、ヒナのメリットでしかありません。しかし、相手の頭の中を想像し「デザインセンスが特別と思われたい」という先輩のメリットと一致するお願い「私がやりたいのは、丸ちゃん先輩だけなんです」にしたことで、
「ほかのデザイナーじゃなくて自分が求められている」と、相手の心に響くコトバになったのです。
それを聞いて、一瞬驚いた顔をした丸ちゃん先輩は…
「しょうがないわね。付き合ってあげるわ、ヒナりん」