論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、「知覚」「感性」「直感」が見直されつつある。そんななか刊行され、各氏がこぞって大絶賛するのが、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という書籍だ。
現役の美術教師でもある著者が、中高生向けの「美術」の授業をベースに、「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、「自分なりの答え」を生み出し、それによって「新たな問い」を生み出すという「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説している。700人超の中高生たちを熱狂させ、大人たちもいま最優先で受けたい授業とは――?
あり得ないポーズのリアルな男たち
前回まではピカソの作品を参考にしながら「『リアルさ』ってなんだ?」という問いについて考えてきましたが、今回は同じ問いについて、別の角度から考えてみたいと思います。
※参考記事↓
ピカソが描いた「5人の娼婦」のあまりにリアルな姿
https://diamond.jp/articles/-/230290
従来の「遠近法」と新たな「ピカソの画法」、この2つだけがリアルさの表現法というわけでもありません。
ピカソが、遠近法とは異なる「リアルさ」を探し求めていたのは、20世紀に入ってからのことでしたが、西洋美術の歴史から一歩離れてみると、まったく違う地域・時代には、多様な「リアルさ」の表現が存在していたからです。ここではその一例を取り上げましょう。
次の絵は、紀元前1400年ごろにエジプトで描かれたものです。縁取りがいびつなのは、この絵がもともとは巨大な壁画の一部だったからです。それではご覧ください。