新型肺炎をめぐって社会が動揺し続ける中、3月2日に発表された大手百貨店の2月度の売上高速報値。東京・銀座や大阪・心斎橋などインバウンド需要への依存度が高かった店舗では2~4割の大幅減となった。昨秋の消費増税以降、苦戦が続く業界にとって新型コロナウイルスの感染拡大が追い討ちをかける形となった。百貨店業界が“三重苦”に苛まれる状況は今後も続きそうだ。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
中国人インバウンド需要が“蒸発”
免税売上高が消えた銀座と大阪
「特に銀座店の客足の減少が大きい。足元では前年同期比で3割程度減っている」――。2月末、ある三越伊勢丹関係者は三越銀座店の動向についてこう嘆いた。
“コロナショック”にいち早く見舞われた百貨店業界。1月下旬、中国政府が自国民の海外への団体旅行を禁止したことで、中国の旧正月である長期休暇「春節」の時期に毎年、都心の繁華街を埋めていた中国人観光客が一気に姿を消した。
百貨店大手の売上高に占める免税品の比率はおおむね1割程度。そのほとんどを中国人が占めていた。とはいえ、数年前に見られた高級ブランド品の“爆買い”はその後鳴りを潜めており、最近では化粧品など単価の低い化粧品にシフトしている。さらに、こうした化粧品の需要はドラッグストアに奪われるようになっていた。
それでも、東京・銀座と大阪・ミナミでは依然としてインバウンド需要への依存度が大きい。その影響は2月の売上高にはっきりと表れた。