楽天の通販サイトの送料無料化の方針に対し、公正取引委員会が異例の緊急停止命令を申し立てた。その背景には、GAFAら巨大IT(情報技術)企業に対する規制を強化するノウハウを蓄積する狙いが透ける。公取委と楽天の攻防は、その行方を占う試金石になりそうだ。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
16年ぶり権限行使で
楽天を追い詰める公取委
GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を規制する上で、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」の条文が、公正取引委員会の強力な武器になりつつある。
公取委は2月28日、楽天が通販サイト「楽天市場」で3月18日から実施を予定している「送料無料化」の方針について、東京地裁に緊急停止命令を出すよう申し立てた。
その根拠にしたのが優越的地位の乱用の疑いだ。これまでも調査を進めてきたが、調査開始から、まだ1カ月余りで、違反を認定して「宝刀」である排除措置命令を出すには証拠が足りない。
公取委が優越的地位の認定に足りる論拠を揃えるには半年から1年がかりの調査が必要で、まずは「疑い」の段階で使える手段として、緊急停止命令の申し立てに踏み切った。申し立ては2004年以来で、実に16年ぶりとなる異例の措置だ。
プラットフォーマーを相手に緊急停止命令を申し立てるのはもちろん初。優越的地位の乱用の疑いを根拠に申し立てるのも初めてだ。
今後、東京地裁は、公取委と楽天の双方から意見を聞く「審問」手続きを経て、命令の発動を判断する。過去に公取委が緊急停止命令を申し立てた7件のうち、公取委が自ら取り下げたものを除く5件の全てで裁判所の命令が出た実績がある。
楽天は28日夜、「法令上の問題はないものと考えている」とのコメントを発表し、これまで通りに3月18日に送料無料化を強行する方針を示した。審問の場で、“無実”の主張を続けるとみられるが、裁判所の停止命令の発動は避けられそうにはない。