楽天放置すればアマゾン・ヤフーに波及
公取委が連鎖に危機感
公取委が楽天の送料無料化に優越的地位の乱用を適用するのに躍起なのは「これを放置すれば、アマゾンやヤフーも、出店者に対して送料を取るなと言えることになってしまう」(別の公取委幹部)というプラットフォーマーの強大化に対する危機感がある。
世界的にGAFAをはじめとするプラットフォーマー規制の議論が熱を帯びる中で、政府は、電子商取引(eコマース)やアプリストアを規制対象に、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法案」を2月18日に国会提出した。
これと並行して公取委は、優越的地位の乱用の適用範囲を拡大してプラットフォーマー規制の強化に対処する方針だが、その中で、今回の楽天の事案は、想定する規制の対象にピタリと当てはまるモデルケースとなった。
公取委は19年10月にプラットフォーマーの実態調査報告書を発表し、アマゾン、楽天、ヤフーなどeコマース事業者を念頭に置き、優越的地位の乱用を適用する範囲を例示している。
この報告書で指摘されたのは、プラットフォーマーによる一方的な「規約の変更」だ。運営事業者(プラットフォーマー)が利用事業者(出店者)に不利益を及ぼすような規約変更は「優越的地位の乱用になるおそれがある」と明示している。今回の楽天の送料無料化を定めたガイドラインの変更は、まさに「一方的な規約変更」事例に合致した。
このほかにも同報告書は、プラットフォーマーが出店者から手数料を徴収する方法や、利用事業者への作業要請、売上金の支払い猶予、規約違反に対するペナルティ制度なども列挙し、これらについても「不当に不利益を及ぼす場合には優越的地位の乱用となるおそれがある」と指摘して、プラットフォーマーをけん制している。
この事例も、楽天と出店者の間で起こっている問題と重なっている。楽天の出店者の任意団体「楽天ユニオン」は、楽天が手数料を徴収する際、売上高だけでなく送料や消費税に対しても課金していることに反発を強めているほか、楽天が16年に導入した「違反点数制度(規約違反に対するペナルティ制度)」についても強い異議を唱えている。
楽天の出店者から漏れるこうした問題についても公取委は情報を得ているもようで、今後、本格的な調査に入る可能性はありそうだ。
規制で求められるのは、プラットフォーマーとそれに参加する事業者の圧倒的な力の不均衡だ。楽天と出店者の対立を通じて、その問題が徐々に表面化する中で、公取委が優越的地位の乱用を駆使して、力の不均衡を是正する摘発が増えるのか。公取委と楽天の攻防は、日本のプラットフォーマー規制の行方を占う試金石になる。