5つの単純な行動が
相手の意識を変える

「仕事をしているのか、していないのか、わからない」という懸念に対しては、スケジュールを上司やチームメンバーなどに極力公開して、いつ、どこで、何を実施しているのかをオープンにしておくことだ。プライベートな予定を非公開にしたがる人が多いが、公開して家事、子供送迎、私用などと記入することの方がお勧めだ。非公開にしてしまうことで、不透明になる。それが疑心暗鬼を生んでしまいかねないからだ。

「日常的な対話ができず、細かな問題が解消されない」という懸念に対しては、オフィスで仕事をしている時以上に、メールやチャット機能を用いて、上司やメンバーとやりとりすることがお勧めだ。

 日に1度は、上司に対してメールを送るということを決めて実施することもよい。用件がなければ、用件をつくればよいし、どんな日でも、1日の業務報告という用件はあるだろう。それも業務報告だけでなく、上司への質問や依頼などが付け加わればなおよい。上司を巻き込むことに役立つからだ。

 私は、海外のオフィスで勤務している上司に対して、毎日必ず用件をつくって、メールかチャットか電話をしていた。そのことは、関係の質の向上にとても役立ったと今でも思っている。

「姿が見えないので、コミュニケーションがとりづらい」という懸念に対しては、ネット会議でビデオをオンにすることがお勧めだ。SkypeやGoogleハングアウトMeetなど、ネット会議を実施する企業は多い。しかし、ネット会議を実施する時に、ほとんどの参加者がビデオをオフにしている。それでは姿が見えず、コミュニケーションの密度が低下するのは当たり前だ。背景をぼやかす機能があるネット会議もあるので、ビデオをオンにするだけで改善できる。

「ネット会議をしても、活発な意見交換ができない」という懸念に対しては、ネット会議で音声をオンにすることがお勧めだ。ネット会議で音声をミュートにする暗黙の掟がある企業がある。主催者が、「話し手以外の参加者は音声をミュートにしてください」と指示するネット会議も多い。それがネット会議の意見交換を減速させている。中には、ネット会議では誰も何も発言しないという会議さえある。音声をオンにして発言することで改善できる。

「メールや業務処理の対応が遅くなる」という懸念に対しては、メールが受信してすぐに返信できない内容だったら、「○時頃返答します」「○日頃回答します」というように、返信することがお勧めだ。すぐに返信できない状況だったら、「今、電話会議中なので」「○○に取り組んでいるので」という現在の状況を付け加えるとなおよい。どこで何をしているのかを示すことにもなるし、在宅勤務者はレスポンスが遅いという先入観を覆すことができる。

 読者のみなさんは既にお気づきだと思うが、在宅勤務で評価を下げないこれらの5つの方法は、在宅勤務であろうが、オフィス勤務であろうが、他のメンバーを巻き込むことに着実に役に立つ。ひとつひとつはとても単純な行動だが、こうした行動が相手の意識を変えることができる大きなパワーを持っているのだ。