拡大を続ける豆乳市場で、50%超のシェアをたたき出すキッコーマン。躍進の裏には、“奇妙”な味の豆乳を連発する“異端”のマーケティング戦略が存在した。特集『キッコーマン 最強“同族経営”の錬金術』(全5回)の#3では、王者として君臨する豆乳市場の攻略法に迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
豆乳市場は9年で2倍に拡大
キッコーマンはシェア5割で“独走”
プリンやバニラアイス、おしるこ、きなこ餅、チョコミント……。まるで、スイーツバイキングのメニューを眺めているようだ。実はこれらには共通点がある。全て、キッコーマンから発売されている豆乳の味なのだ。
右肩上がりで成長が続く豆乳市場。2010年と比べて19年の市場規模は、生産量ベースで約2倍の40万8919klとなった。
豆乳には、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンが含まれることから、「女性の飲み物」というイメージが強かった。
だが近年では、植物性タンパク質を手軽に取れるため、男性が手に取るケースも増え、市場の拡大を後押ししている。
かつては青汁のように、「罰ゲームで豆乳を飲まされる」ことも多かった。しかし、メーカーの技術の進歩で味が改善されたため、豆乳に対するハードルが下がった。
この豆乳市場で独走を続けているのが、キッコーマンだ。キッコーマンのシェアは50%を超え(生産量ベース)、業界2位で同20%程度のマルサンアイを大きく引き離す。19年のキッコーマンの豆乳の販売量も17年比で16%増と推計され、破竹の勢いとなっている。
冒頭の“奇妙”な味の豆乳に対して、消費者からは「売れるわけがない。こんな商品を出す意味が分からない」(40代女性)といった冷ややかな声も聞こえる。
だがそういった反応も、実はキッコーマンにとっては想定内だ。豆乳事業の躍進を支える、“練りに練った”マーケティング戦略の一つが、奇妙な味の連発なのである。