縮小を続ける国内のしょうゆ市場。しょうゆメーカーの数はこの30年間で半減した。特集『キッコーマン 最強“同族経営”の錬金術』(全5回)の最終回では、「キッコーマン=しょうゆ」のイメージが強過ぎることを危惧する堀切功章社長に、「醤油の王者」の生存戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
キッコーマンブランドが「強過ぎる」
シェアが2位以下のカテゴリーではトップを狙う
――国内市場をどのように捉えていますか。
消費の成熟化とともに、日本は人口減少が続いているため、特に食に関しては決して良い環境とはいえません。
ただ、成熟したマーケットには新しいチャンスの芽があると考えています。これまではマスに対してのアプローチを主に行ってきました。
ですが、一人の人が満足すれば他の人も満足するかというと、必ずしもそうではなくなってきた。消費が成熟したことで価値観が多様化し、個人の価値観に基づいた消費へと変化しています。
――しょうゆでトップシェアを独走しています。
確かにしょうゆではトップメーカーの位置付けでしょう。ですがその他のほとんどのカテゴリーで、キッコーマンは2位以下のメーカーです。
人々の間で、「キッコーマン=しょうゆ」というイメージが強過ぎます。現在の国内市場は、しょうゆ市場よりも麺つゆやたれといった、しょうゆをベースとした加工品市場の方が大きい。
トップシェアでない領域にまだまだチャンスがあると考えており、各カテゴリーでトップを狙っていきます。
実は、ケチャップやトマトジュースの「デルモンテ」やみりんの「マンジョウ」といったブランドもキッコーマンです。キッコーマンがトマトジュースを手掛けているというと、必ず「しょうゆっぽい」と言われてしまいますが(笑)。
キッコーマンブランドが強いことは、しょうゆにとっては良いことですが、しょうゆ以外の商品では悪い方向に働く場合があるのです。ですからブランド戦略上、あえてキッコーマンとリンクさせていません。