「PBは弱小メーカーが手掛けるもの」という考えは、今は昔。トップメーカーであっても、PBを手掛けざるを得ないケースが増えている。それでもキッコーマンは「しょうゆのPBはやらない」と強気の姿勢を崩さない。特集『キッコーマン 最強“同族経営”の錬金術』(全5回)の#2では、“醤油の王”の小売業攻略法を追った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
PBの製造を小売りに強要されるメーカー
薄利で収益を圧迫
「しょうゆのPBはやらない。自社商品を売っていく」。しょうゆの製造・販売を行うキッコーマン食品の中野祥三郎社長は力強く言い切る。
スーパーやコンビニエンスストアなど小売りが企画・販売するPB(プライベートブランド)の勢いが止まらない。メーカーが自社ブランドとして展開するNB(ナショナルブランド)は正念場を迎えている。
「正直、PBをやりたくはない。だが、小売りがやれとしつこい」(食品メーカー幹部)と困惑の声が聞こえる。かつては弱小メーカーがPBを手掛けるケースが多かった。しかし今では市場シェアのトップメーカーが製造することも増えた。
メーカーにとってPBのメリットは、店舗の棚に確実に陳列される点だ。また販促費など営業活動のコストを抑制できる。
ただデメリットとして、メーカー側の取り分が圧倒的に少ないことがある。NBと比べ、PBの取り分は半分以下といったケースもしばしばある。
それでも、小売りの力が増し続ける今、メーカーにとってPBの製造は小売りに対する重要な駆け引きの材料となっている。
「マヨネーズやみりん風調味料、油などではカテゴリーに占めるPBの比率が2割を超え、NBを侵食している。それに比べ、しょうゆのPB比率は1割程度と抑えられている。これはキッコーマンがPBを手掛けず、NBでの生き残りに成功しているからだ」と小売り担当アナリストは明かす。
小売りの軍門に下らず、PBはやらないとキッコーマンが言い切る背景には何があるのか。