すっかり定着した適性検査型入試

 思考力を問うような「適性検査型入試」は、直接には公立中高一貫校の登場によってもたらされた。公立一貫校では、学力選抜ではなく適性検査であるとして、教科枠にとらわれない入試を行ったからである。東京・神奈川なら2月3日の本番に向けて、志願者の力試し的なものとして私立各校が徐々に取り入れていった。

 中でも、成立学園(東京・北区)は適性検査型入試で受験生を増やしている学校の1つである。本番直前まで公立受検生が修正できるよう、入試当日のうちに各塾へ問題と採点した答案を届けるというサービスまで行っている。入試も、小石川・白鷗型と九段型の2つに分けて実施するほどのこだわりである。独自の追跡調査の結果、8割以上得点した受験生は全員が都立一貫校に合格しているというほど確度が高いのが自慢となっている。

 こうした徹底した適性検査型対応の結果、近隣の赤羽・王子・東十条といった北区民中心だった受験生が、秋葉原駅での乗り換え1回でたどり着けるJR総武線あたりまで広がったという。ここで終われば受験塾の延長なのだが、自校の教育内容にもこうした取り組みは影響をもたらしており、前ページの写真にもあるような「英語を英語で考える」がコンセプトで、ネイティブの教員が常駐しているSGC(Seiritsu Global Center)などの新しい教育につながっている。

 これから県立進学校が続々と中高一貫化していく茨城。県立鉾田第一と鹿島の2校が2020年から中学での募集(計80人)を始めた同じ鹿嶋・神栖・潮来地区にある清真学園(茨城・鹿嶋市)では、受験生が前年比+33人の192人とむしろ増加した。前期試験の平均点が7割近くに達しており、受験生のレベルも向上している。「公立中高一貫校ができることで中学受験に関心を持った保護者の方が多かったのでは」と学校側では見ている。

 清真学園では2月1日に後期試験を実施したが、発想力テストでは「牛乳パックを使ってピンホールカメラを作ろう」という課題を出すなど、ユニークな教育の実践をうかがわせる入試も行っている。

 2008年開校と県内公立一貫校の先駆けである並木中等教育学校(茨城・つくば市)は、適性検査問題は県内統一だが、面接では「できるだけ長く回るコマを作る」というものづくりを課題とした。2019年で東大7人、医学部医学科18人といった進学実績を残していることもあり、2020年から一貫校化する近隣の県立竜ヶ崎第一などの影響をあまり受けず、実質倍率3.78倍の入試となった。