ユニークな試みであるSGC(Seiritsu Global Center)での授業風景 写真提供:成立学園中学・高等学校ユニークな試みであるSGC(Seiritsu Global Center)での授業風景 写真提供:成立学園中学・高等学校

近年まれな激戦だった2020年の首都圏中学受験。入試問題はどのような生徒に来てほしいかを示す学校からのメッセージでもある。新学習指導要領の実施を控えて、中学入試も多様化が進んでいる。(ダイヤモンド社教育情報)

受験生を集めるユニークな入試

 関西の一部超難関校が2日間にわたって算数を課すものの、オーソドックスな中学入試は国数理社の4科型である。伝統校ではこれに加えて国数の2科型も多く行われてきた。しかし最近では、入試の形式が多様化してきている。特に、中堅・中位校ではさまざまな工夫を凝らす傾向があり、毎年のように新しい入試が登場している。

 午後入試が流行となった2020年には、算数1科型を男女別学校でも導入する例が多く、志願者確保に成功している。今回は、多様な入試について見ていきたい。

 宝仙学園中学校共学部理数インター(東京・中野区)は「日本一入試方法の多い学校」を自称している。特待選抜では4科と公立一貫型と新4科特別総合を実施、一般選抜ではリベラルアーツ、AAA(世界標準)、グローバル、理数インター、英語ALなど、入試名を見てもにわかに出題形式が思い浮かばないようなものも多数あり、先生方の苦労のほどがうかがえる。他にも帰国生等「世界現地」入試として、シンガポール、ニューヨーク、シカゴ、シアトルがあり、加えて「世界Skype」というリモート入試もありで、実際に日本一の品ぞろえと思われる。

 2020年には「読書プレゼン入試」を設けた。単なる読書感想文ではなく、自分が選んだ作品に対する自身の価値観をプレゼンという形で言語化する点がユニークな試みといえる。

 ユニークさという点では、東京女子学園(東京・港区)の「スマホ持ち込みOK入試」は画期的だったかもしれない。図書館を会場に、情報端末を駆使しながら60分の1科入試を行った。受験生は自分のスマホで課題に挑んだが、受験後のアンケートに「楽しかった」というコメントが寄せられるなど、単なる学力試験ではないクイズ的な思考力を問う試みだったといえる。

 女子校では、玉川聖学院(東京・世田谷区)の「多文化共生試験」も4回目となり、すっかり定着している。こちらは本人または保護者が外国籍であったり、海外での生活体験があるなど、国際的な生徒が主な対象となる。自分で作成したポートフォリオを提出し、面接も実施する。2020年の出願者数は15人だったが、こうした生徒を入れたいという学校の意思が伝わってくる。

 同じ世田谷区にある男子校の東京都市大学付属では、帰国生入試が7回目となる。志願者283人中、英検1級が7人、準1級が53人と準1級以上が2割を占めている。まだ小6生なのに、である。

 2019年から共学化した武蔵野大学中学(東京・西東京市)で、前年比2倍増の受験者を集めた教科の学力以外を評価する入試が2つある。昨年は思考力入試として実施した「アドベンチャー入試」と同じくプレゼン入試だった「自己表現入試」である。特に前者は受験生からも好評で、楽しみながら他の受験生とコミュニケーションを取りながら刺激を受けたといった感想が寄せられている。学力一本やりでない評価軸という点が新しいのだろう。杉並区を筆頭に東京23区からの受験生も増加、その比率は前年の25%から34%へと顕著である。