生徒が学校の文化を体現する
受験生にとっては大変厳しいものだった2020年の首都圏中学入試。東京23区の中心部はもとより、郊外にもその熱気は伝わっている。
東京学園高校(東京・目黒区)を前身として2019年に開校したドルトン東京学園は、河合塾が運営しているドルトン・プランに基づく中高一貫共学校だ。学校の所在地は東京・調布市とはいえ、ほぼ世田谷区成城との境にある。併願校として最も多いのが成城学園であり、自由な校風と相まって、教育熱心な富裕層の受け皿として評価されている様子がうかがえる。
2月4日まで5回の入試を行い、募集定員100人に対してのべ829人の出願があった。19年比+29%である。複数回の出願者・受験者が増えたということは、この学校を第一志望にした受験生が増えたことを意味する。受験生が殺到した結果、合格倍率は3.6倍以上と19年の1.3倍程度から著しく難化している。
ドルトン東京学園では、学校説明会で「もっと生徒の声が聞きたい」という保護者からの要望に応えて、入試当日に受験生の付き添いで来校した保護者向けに、生徒が企画・運営する説明会を実施している。中1生による堂々としたプレゼンは、自分の子どもの1年後の姿を思わせたかもしれない。
学校選びでは、偏差値という学力水準が主にはなるものの、同じような難易度でも学校の文化は大きく異なるのが私立校である。こうした校風に触れるためにも、学校説明会や学園祭・体育祭といった学校行事が公開されている。
同じく調布市にあるカトリック女子校の晃華学園も受験生が増加した。とりわけ第1回となる1日午前の出願者が121人(前年比44%増)と躍進している。今年の出願傾向として、「締め切り間際の出願者が増加した」「過去の説明会に参加登録のない出願者がいた」「都立一貫校との併願者が多くいた」の3点を挙げている。
これは他の学校にも多く見られた傾向である。ネット出願が多数派となり、締め切り時間ぎりぎりまで検討する受験生の保護者が増えている。その結果もあって、訪問をしたこともない学校への出願も増加傾向にあるのだ。偏差値とその時点での競争倍率だけで出願することへの懸念から、「受験する学校は進学する可能性がある学校なので、受験生本人が1回は学校見学をした上で受験してほしいです」(晃華学園)という至極もっともな先生の懸念を呼び起こした。実際、合格が決まってから学校教育の詳細を聞きたがったり、見学希望者がいたりという本末転倒な事態も起きている。
神奈川では、カトリックの女子校だったが20年から共学化する聖ヨゼフ学園(横浜市鶴見区)も19年比+66%と大きく志願者を増やしている。すでに付属の小学校は18年に日本の小学校初の国際バカロレアPYP校に認定されており、共学化された中高でも同様の教育が行われていくことへの期待は大きい。