『週刊ダイヤモンド』4月4日号の第1特集は「健康診断のホント」です。皆さんおなじみの「けんしん」には「健診」と「検診」があります。健診は健康状態をチェックするもの、検診はがんなど特定の病気を早期発見するためのものです。これら「けんしん」のホントを知り、賢く受診する法をお伝えします。後でオロオロしたり、後悔したりすることのないよう、自分の体を正しく守りましょう。

【覆面座談会】
現役医師が教える
後悔しない人間ドックの受け方


嬉々として健診・検診を受ける人はあまりいない。たいていは渋々だ。それだけに誤解や勘違いが結構多い。健康保険組合や企業が契約する人間ドック・健診センターに勤務する現役医師3人に、「検査」についてぶっちゃけトークを展開してもらった。

【参加者プロフィール】
A氏(都内健診センター勤務・50代男性) 
B氏(都内健診センター勤務・40代男性)  
C氏(都内人間ドック勤務・30代女性)

──健康診断、人間ドックの受診者にありがちな誤解は何かありますか?

A 例えば人間ドックが2〜3週間後に控えている人がいるとします。その人が「ここ数日、体のどこそこがおかしい」と異変を感じていても、「すぐに病院へ行こう」とはなりません。「しばらくすると人間ドックがあるから、ちょっと待って調べてもらおう」とだいたい考えますね。
 そもそも人間ドックや健診、検診というのは、あくまで症状のない人の病気リスクを見つけるのが目的です。この点はかなり誤解されていますよね。

B すでにはっきりと症状が出ている場合、例えば脳卒中や狭心症のような症状が出ている場合、医学的な専門のアプローチが必要です。消化器でいえば便秘などの症状がある場合は、迷わず病院に行ってください。
 人間ドックに来てもらえばこちらはもうかりますが(笑)。

A その通りです。人間ドックでは最低限の全身チェックをしますから、2〜3週間後に受ける人間ドックで病気を見つけることはできるかもしれません。
 しかし、例えば分かりづらい肺がんなどの場合、CT(コンピューター断層撮影)画像やレントゲン(X線)画像のダブルチェックなどに相応の時間を要します。そうすると、受診者への報告がさらに1〜2週間先になる。トータルで1カ月か、あるいはもっと時間がかかるので治療開始が遅れることになってしまいます。このタイムラグがひょっとしたら命取りになるかもしれない。
 症状が出ていれば、やっぱり専門医の下で症状に合わせた精密検査をしないといけません。

C 先ほど便秘のお話が出ましたので補足すると、一般に便秘とは便が硬くなって、便が出にくい状態だと思われがちです。何日も便が出ない状態の後、水みたいな便が出ると、これは便秘だと思わない人が結構多い。ですが、それは大腸がんの狭窄症状であったりする。便通の異常というのはやはり注意が必要です。
 他にも「食道や胃の辺りがモヤモヤする」と言っていた人が狭心症だったことがある。よくあるケースで、上腹部の症状と狭心症の一部の症状は似ているんです。

A 別のケースでは、足のむくみで来院した人が血栓症だったり、手足のしびれが脳卒中の前触れだったりしました。だから「いつもとちょっと違うかも」「何か動きづらい」といったときは、たとえ症状が軽微であっても、医師に相談した方がいい。

──受診者が気を付けておいた方がいい検査はありますか? 

B 喀痰検査は意外に難しいんですよね。だいたい出てくるのは、唾だけだったりする。

A でも、一生懸命出そうと思っても出ない人は、おおかた病気の心配はない。

B 喀痰検査は意味がないとまでは言いませんが、そもそも容器に入れたはずの痰の量が足りないなど、検査が難しいのが実情です。肺がんの早期発見という本来の検診の目的からいえば、できればCTを撮ってもらった方がいい。

健診・検診のホントを知って
自分の体を正しく守ろう


『週刊ダイヤモンド』4月4日号の第1特集は「健康診断のホント」です。
おなじみの「けんしん」には2種類あります。健診は健康状態をチェックする「健診」と、がんなど特定の病気を早期発見しようという「検診」です。
健診はさらに、年に1回の受けないといけない定期健診と、40歳以上になると受けるメタボ健診とがあります。これらには実は、受診していれば長生きにつながるというエビデンス(科学的根拠)はありません。効果は微妙です。
ですが、勤め先や健保組合の「受けなさい」というお達しに逆らって、検査を無視するのは得策ではありません。血圧、コレストロール、血糖値など「誤解だらけの基準値」は、「正しい解釈」を知ることで賢く付き合うことが可能です。
健診と違って、エビデンスに裏付けられているのが「がん検診」です。日本人の2人に1人が生涯のうちにかかる国民病とあって、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つを対象に、ガイドラインで検査の有効性、利益と不利益が吟味されています。
がん検診には市町村が実施する対策型、勤務先や健保組合などであくまで任意で行われている任意型があります。東京都の調査では勤務先で、あるいはその補助を受けて人間ドックなどで受けた人が5割強、市町村を通じて受けた人が3割強でした。
日本人のがん受診率はこれらを全てひっくるめて5割を下回る程度といまひとつ。がんはもっと正しく怖がらないといけません。
がん検診をきちんと受けるには、エビデンスに基づいた「有効性が確認された検査内容」や「検査機器の真の実力」を理解し、「人気検査の欠点」や「意味のない検査」をしっかりと押さえましょう。有効な検査が受けられるところを探すための「人間ドック・医療機関リスト704」も参考にしてください。
「夢の検査」「最新技術」といった言葉にも注意が必要です。「尿・血液・唾液1滴で分かる」の謳い文句に踊らされないために、検査の信頼度、危うい実態を問いました。「この食べ物で病気が治った」という巧言も同様です。しっかりと科学的根拠に基づいた「食事術」を紹介しました。
新型コロナウイルスへの対処は、もし感染してしまった時に重症化してしまうリスクファクターをつかみ、避けることカギになります。自分の体を正しく知るのが先決です。健康診断のホントを学び、賢く受診するために、本特集をぜひご活用ください。
(週刊ダイヤモンド編集部 小栗正嗣)