エルビス・プレスリーの銅像。エルビス・プレスリーの主治医は「エルビスは長年、慢性便秘に苦しんでいた」と証言していたエルビス・プレスリーの銅像。エルビス・プレスリーの主治医は「エルビスは長年、慢性便秘に苦しんでいた」と証言していた Photo:PIXTA

便秘で悩む人は多いが、医師でさえも「便秘は病気ではない」と思う人がいるほど、世間では「軽く」見られがちだ。しかし、決して侮れない病気であり、重大な病気の引き金になることもある。便秘医療の実態について、横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任授に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

「便秘は病気ではない」と
名医さえ侮っていた

「便秘は怖い病気、侮ってはいけません」――横浜市立大・肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授は力説する。日本では、実に1700万人以上、国民の7人に1人が便秘で苦しんでいると推測されており、中には生命にかかわる危険な便秘もあるというのに、「患者さんも、医師さえも、『便秘は放っておけばいい』くらいの意識しか持っていない人が多過ぎる」と嘆く。

 なにせ長年、大勢の患者を治療してきた便秘医療の第一人者である中島教授自身でさえ、つい最近まで、「便秘など病気ではない。病院を受診する必要なんて全然ない」と思っていたというのだから、一般人の意識が低いのも仕方ないかもしれない。

「2012年に、厚生労働省の偽性腸閉塞(ぎせいちょうへいそく)という難治性便秘の研究会で班長を務めたことがきっかけで、便秘のリスクを知り、かつ自分が便秘についてまったく理解していなかったことに気づき、愕然とさせられました」。