2月12日と3月2日の本連載で、新型コロナショックを契機にした日本経済の景気後退と株価下落の予想として、筆者は2つのありそうなケースを提示した。
「小悲観ケース」ではITバブル崩壊による2001~02年並みの景気後退、また「大悲観ケース」ではリーマンショック級の2008~09年並みの景気後退のケースを示し、「すでに日経平均株価指数で1万9000円程度への下落が視野に入っている。さらに深刻化してリーマンショック級の不況になった場合には1万5000円前後まで覚悟すべきだろう」と書いた(「新型コロナ不況で株安はどこまで進むか、リーマン級なら1万5000円視野」2020年3月2日掲載、2月末執筆)。
その後の事態の展開は、大悲観ケースの到来を示唆するものとなっている。世界経済にとってとりわけ重大なのは米国での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染爆発だ。2月末の前回原稿の執筆時点では米国での感染者はまだ極めて限定されていたが、「米国でもCOVID-19を含む形で米国疾病対策センター(CDC)の検査が今後進展する結果、潜在していた同感染者が多数発生するかもしれないというリスクもある」と述べた。
そのリスクは予想以上に劇的に顕現化してしまった。感染者数の激増で、米国では非常事態宣言や都市封鎖が実施されたが、3月26日時点で米国の累積感染者数は、感染爆発の震源地である中国やその最大の飛び地とみられるイタリアを一気に抜いて世界最多となった。第2次世界大戦後としては初の「世界パンデミック・リセッション」の到来である。
筆者は昨年来、クレジットサイクル(信用循環)の観点から2020年中に米国経済の景気後退が始まる可能性が高いと予想してきた(「米国の次期景気後退入りは2020年、最大4割の株価下落に要警戒」2019年7月19日掲載)。
もちろんCOVID-19の感染爆発が景気後退の契機になるとは、当時は誰も予想し得ないことだったが、米国経済は長い景気拡大が続いた結果、信用(債務)が伸びきり、株価は割高となった脆弱な局面をCOVID-19に襲われたのだ。
3月24~26日の株価の大反発で「株価は底を見たのでは?」と思う方々も少なくないかもしれない(直近底値、日経平均は1万6358円、S&P500は2192)。しかし2月後半頃から始まった急速な実体経済の後退を示す経済データはこれから公表される。
すでに3月26日に発表された米国の新規失業保険申請件数(週次データ)が、328万人と1967年の同統計開始以来の桁違いの増加(悪化)になったことは序章にすぎない。それらが公表されたときに改めて市場が再びショックにさらされることを覚悟しておくべきだろう。