サッカー協会・田嶋会長
退院したサッカー協会・田嶋会長はオンラインでの記者会見で入院生活で見た医療現場の実態を赤裸々に語った Photo:JIJI

新型コロナウイルスに感染したことを自ら公表し、都内の病院で闘病してきた日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(62)が2日に退院した。同日午後にオンライン形式で実施された記者会見では、目に見えない敵に打ち克つまでの18日間に及んだ入院生活で見聞きしてきた、医療現場の最前線における切迫した現状だけでなく、新型コロナウイルスを取り巻く日本社会の課題などを、実際に感染した者でしか分からない、重みを伴った言葉とともに訴えた。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「医療機器の在庫が刻一刻と少なく…」
入院中に見た医療現場の危機的状況

 目に見えない敵に打ち克ち、帰還を果たしたからこそ、声を大にして訴えたい事実がある。新型コロナウイルスを巡る最前線の光景を目の当たりにしてきたからこそ、発せられる言葉には重みがあった。

「今の医療体制に対してさまざまな意見や批判があると思います。ただ、自分が入院していたから分かることですが、現場の医師や看護師、取り巻くスタッフの方々、そして保健所の方々が必死になって医療崩壊を起こさないように食い止めようとしている。そのことを皆さんにお伝えしなければいけないですし、医療に従事している方々が感染しない、あるいは負荷がかかり過ぎて疲弊させない状況を作らなければいけないと常に身近で、自分の肌で感じてきました」

 パソコン画面を介して切迫した状況を伝えてきたのは、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長だった。新型コロナウイルス感染を調べるPCR検査で陽性反応が出たことを公表し、氏名が特定された日本で初めての感染者となった同会長は、2日に都内の病院を退院して記者会見に臨んだ。

 とはいっても会見場が用意されて、集まったメディアとの間で質疑応答が交わされたわけではない。パソコンやスマートフォンなどを介する、オンライン形式の記者会見を急きょ開催。やり取りの中で、肺炎の症状が発見された先月16日から図らずも送ってきた入院生活を振り返った。

「入院した日に検体を取って、翌日に新型コロナウイルスに感染していることが分かった次第です。さまざまな治療や対処療法をしていただいた中で、咳というものはありませんでした。発症前に味覚や嗅覚に変調をきたしていたのかと言われれば、ちょっと記憶にありません。ただ、入院後も微熱が1週間ぐらい続きましたが、2週目からは比較的落ち着いた状態で入院していました」